「百貨店で展示するのには、
どのくらいの費用がかかりますか?」
そんな質問をメルマガ読者
の方から頂きました。
百貨店美術画廊での展示は貸し画廊
での展示とは違い、
展示料金を払えば展示できる
というわけではないのです。
今回は百貨店美術画廊で
展示する方法などを
成功例も交えて紹介していきます。
目次
百貨店やデパートでの展示とは
百貨店のギャラリーとはどんな場所
なんでしょうか?
私はこれまで東京、大阪、広島、
仙台、横浜、埼玉などなど
日本全国様々な百貨店美術画廊で
展覧会を開いてきました。
今回はまず初めにそんな経験を
生かし、百貨店やデパートでの
絵画の展示販売や画廊との違いを
徹底解説していきます。
毎週展示が変わる
百貨店美術画廊では、週替わりで
展示をやっています。
絵画や立体、工芸、ポスターや版画
などなど、場所によっては
現代アートなども
幅広く展示しています。
毎週展示される作品が変わるので、
毎週のように散歩がてら
見に来るお得意様も
いらっしゃいます。
売れっ子作家の展示の場合、
欲しい作品を求めて、
展覧会初日にファンが殺到し、
赤札が何枚もつくようです。
売れた作品はその場でお客様が
持ち帰ることも珍しくないので
売れっ子作家の作品を全て
見たい場合は、
展示初日に行くべきかも
しれません。
だいたい同時に2本の展示をやっている
多くの百貨店美術画廊では、
大画廊と小画廊があり、
1週間で2本の展示が
組まれています。
小画廊が工芸サロンという名前が
付いている場所もあり、
そんな店舗では、お茶碗や棗、
花器、扇子といった茶道具を
扱っていることもあります。
最初の1枚を買うのに最適
百貨店美術画廊では、有力な画廊が
間に入って、
画家を紹介して展示をするので
作品の品質が保証されています。
また、飾りやすい絵が額縁付きで
販売されているので、
初めて絵を買う人にも
向いているでしょう。
休日にはイベントがある場合もある
会期中の休日には、一日絵画教室や、
似顔絵制作、ライブペインティング、
技法講座などなどのアートイベント
が開かれることも多く
多くの方で賑わいます。
無料で絵を描いてもらえるイベント
も多いので是非参加してみましょう。
私が前に参加したイベントの
ユニークな例では
工芸サロンに臨時の茶屋が出現し、
作家自らが抹茶を振る舞うという
お茶会のイベントもありました。
(もちろん私はお客として
参加しました。)
お値段はやや高め
百貨店美術画廊での展示は
売り上げを百貨店、画商、画家
の3者でわけるため、
必然的に値段は高くなります。
ギャラリー巡りが好きな方は
「ギャラリーで展示している作家と、
百貨店美術画廊で展示する作家は
こんなに値段が違うのか。」
と驚く方も多いかもしれません。
催事場を使う場合もある
百貨店では、期間限定で空きスペース
や催事場を使って
様々なイベントが開催されます。
北海道物産展やイタリア物産展、
婦人服や宝飾品のバーゲンセール
などなどいろんな催事があります。
その中に時々、○○アートフェアの
ような形で美術画廊主導での
催事が組まれることがあります。
一階のロビーや催事場などの広い
スペースにパーテーションを使って、
臨時の展示会場を作るのです。
百貨店美術画廊は上層階にあること
が多いですが、これはもともと、
シャワー効果を狙ったものでした。
シャワー効果とは、お得意様向けの
フロアを上層階に設けて、
上層階での買い物が終わった後、
エスカレーターで下りながら、
中下層階のフロアをめぐってもらう
という導線の工夫のことです。
このため、一般の方が百貨店美術画廊
に入ることは少ないですが、
催事場での開催の場合、そんな、
普段は画廊の階まで上がってこない
お客様も気軽に入ってきてもらえる
というメリットが催事場にはあります。
百貨店やデパートとギャラリーの違い
百貨店美術画廊とギャラリーでは
展示されている作品の雰囲気も違えば、
値段も違います。
前に、ギャラリー、百貨店両方で
展示経験の豊富な作家に聞いた話
では
「具象絵画で勝負したければ
百貨店を。
抽象絵画で勝負したいのなら
海外や自分にあったコマーシャル
ギャラリーを目指すと良い。」
という話を聞きました。
確かに百貨店美術画廊での展示では
抽象画はほとんどみません。
時々、抽象画家で百貨店美術画廊で
展示して、成功されている
売れっ子作家の方も見かけますが、
そんな方はたいてい、作家活動歴
30年の大ベテランで、毎年その場所
で個展を開き、
顧客がたくさんいるというような
大家の方ばかりです。
若手の抽象画家で百貨店美術画廊
での展示する方も知っていますが、
なかなか難しいようです。
百貨店美術画廊はお得意様サロン
百貨店美術画廊で展示される作品は
基本的に販売目的で展示されています。
なので、それぞれの百貨店の客層
にあった作風の作品を展示している
ことが多いです。
例えば、たまプラーザで展示した
時は、若い客層にあわせて、
アニメのセル画の展示やポスターの
展示が開催されていました。
西武百貨店系列は展示販売よりも、
広告塔としての役割を期待している
ので、
エッジの利いた現代アート系の
作品を取り扱うことが多いです。
西武に対し、東武百貨店系列は
話題性よりも販売重視なので、
伝統的な作風の作品展示
が多い印象です。
逆に三越や高島屋では、有名美大の
教授や画壇の大家など、
画家のキャリアを重んじる
傾向があります。
最近では日本橋三越で小松美羽さん
が個展を大成功させ、
話題になりました。
これは業界の人にとっては
驚くべきことのようです。
知名度次第で、若手作家も
日本橋三越で展示できる
ということがわかり、良い変化が
起きているなと思いました。
それに対して伊勢丹では、若手作家
の展示も元々積極的に行います。
また、地方都市の場合には
地元作家や地元の美術団体の展示も
多く、
ユニークな作品も見られるでしょう。
このように、百貨店の系列や、
店舗の地域によっても
お得意様の客層が違うので
美術画廊に並ぶ作品も
変わってきます。
ギャラリーはセレクトショップ
ギャラリーには企画画廊
(コマーシャルギャラリー)と
貸し画廊(レンタルギャラリー)が
あります。
企画画廊はギャラリーオーナーの
絵画のセレクトショップのような
イメージです。
ギャラリーごとに所属作家の作風は
変わってきます。
展示の際も基本的に取扱作家は
展示料金を払う必要はないです。
これに対し、貸しギャラリーは
基本お金を払って展示する
貸しスペースです。
海外ではこれはギャラリーとは
呼ばないそうで、日本独自の
文化のようです。
百貨店やデパートで展示する方法
百貨店美術画廊で展示をしていると、
絵がかなり売れます。
人目に触れることも多く、
知名度アップ、キャリアアップにも
向きます。
百貨店美術画廊で展示はそんな
魅力的な活動なわけですが、
あまりそこへのルートは
公開されていないようです。
今回は百貨店美術画廊で展示する
方法を、私が知る範囲で
お話ししていきます。
画廊の取扱作家になる
百貨店美術画廊での展示は基本的に
画廊が百貨店に取り扱い作家を
紹介する形で行います。
なので、コマーシャルギャラリーの
取り扱い作家になるのが堅実な
やり方でしょう。
ギャラリーによっては新人賞や公募、
コンクールを行い、目ぼしい作家を
選出する形をとっている場所もある
ので、そこがねらい目かもしれません。
また、アートフェア東京などの
イベントでは有力な画廊が数多く
出展しています。
もちろん、百貨店美術画廊での
展示枠を持っている画廊も
数多く出展しているでしょう。
自分の作風に合う画廊を見つけ出し、
スタッフに話を聞いてみるのも
良いかもしれません。
貸し口座屋
百貨店美術画廊での展示枠を
持っているのはコマーシャル
ギャラリーだけではないようです。
貸し口座屋という団体がいるらしく
その団体から口座を借りて
百貨店美術画廊での展示を開催する
個人や企業も最近ではいるようです。
最近はSNSなどの発達により、企業が
作家を見つけてアプローチする
のが簡単になりました。
そこで、埋もれている作家をSNSで
見つけてプロデュースし、百貨店
デビューをさせる企業も増えている
ようです。
百貨店やデパートで展示する作家の成功例
百貨店美術画廊で活躍する
売れっ子作家を何人も知っていますが、
今回は最も多いパターンの
成功例を紹介します。
①有名な公募やコンペで入選
②コマーシャルギャラリーの
オーナーが入選作家に声をかける
③コマーシャルギャラリーが口座
(展示枠)をもっている百貨店美術画廊
でのグループ展に参加
④グループ展で売れた作家が個展に昇格
といった流れで成功されている
作家が多いです。
早い人で④に20代後半で
たどり着くようなイメージですね。
百貨店やデパートで絵画を売るということ
百貨店美術画廊での展示を成功
させている作家さんでも、
絵の収入だけで生活している人
はごく一握りのようです。
百貨店でやる作家になったから
といって経済的な自由が手に入る
わけではないのですが、
百貨店での展示は様々な学びを
得られます。
有名なコレクターさんに出会うこと
もあったり、絵を日常的に買う方々
の優雅な話をきくことが
できたりなどなど。
実は私は「作家活動やってます。」
そう言うのに躊躇してしまいます。
なぜなら、「自称作家」があまり
にも多く、また、ひょっとしたら
自分も自称作家に過ぎないのかも
しれない…
そう思う時がたまにあるから
なのです。
日本における画家はフリーランス
なので、組織に所属して給料をもらう
「よくある職業」ではありません。
公式な所属も肩書きも
ないに等しいのです。
しかし「百貨店美術画廊で
展示する作家」という肩書は
画家としての自信を
私に与えてくれました。
そういった意味でも百貨店美術画廊
での展示というのは価値ある活動だ
と私は思います。
本気で画家になりたい、
そんな方は是非挑戦してみてください。