【アートの価値とは】高額な現代アートの価格やお金の仕組みを解説 

アートの価値って全くわかりません。

そんなことを言われることが
たまにあります。

 

手短かにアートの価値について
お伝えできれば良いのですが

残念ながら、十分な説明をしようとすると、
かなり長くなってしまいます。

 

アートの価値について論じる批評は数多く
ありますが、難しいものが多く、途中で
飽きてしまうかたも多いでしょう。

 

今回は、日本全国で100枚以上絵を売った画家
という立場で、個人的なエピソードも交えて、

出来るだけポップでライトに、時にオタクっぽく
「アートの価値」について解説していきます。

 

目次

アートの価値とは何か

アートの価値は意外に思われる
かもしれませんが、

・グッとくるかどうか
・希少かどうか

この2点で決まると言えるでしょう。

これらの2点について、深堀りして
マニアックに解説していきます。

 

アートの価値の起源

アートの価値について、本格的な議論が
始まったのは

『百科全書』の編纂で有名な
ディドロ以降のようです。

 

ディドロの最も有名な批評は、同時代の画家
シャルダンの作品の批評かと思います。

シャルダンの静物画を
「慎ましい生活をする人々の人生観が
表現されたアート作品」

として評価したのです。

 

それ以前の静物画はメメントモリ(死を思え)
など、

その時代の誰もが知っている聖書などの
物語から引用した格言や教訓を伝えるための
工芸品であり、

「挿絵」のような役割を担っていたのです。

 

ディドロはシャルダンの静物画を
「聖書の挿絵」以上の

アート作品として評価したのです。

 

このようにヨーロッパの歴史上、
初めて本格的に美術批評をやったのは
ディドロでしたが

 

それまでの絵画や彫刻はアート作品
ではなく、用途を持った

工芸品のような存在でした。

ミケランジェロの天井画は制作当時、
芸術作品として価値があったのではなく

教会や聖書の世界の威光を強めるのに
役立つ工芸品として、

プロパガンダの手段として
価値を持っていたわけです。

 

美術史におけるアートの価値

ディドロに始まった美術批評の歴史は
時代を経るごとに、

どんどん分厚いものになっていきます。

 

表現(アート作品)と、それに関する言説(批評)
が蓄積され美術史が抱える情報が増えていくと

文脈に依存した表現が登場します。
これは云わば

引用やパロディーのようなものです。

具体例としては、マルセル・デュシャン
L.H.O.O.Q」(彼女のお尻は熱い
という卑猥な意味だそうです。)

などがあるでしょう。

 

「モナ・リザ」という西洋絵画の代表を
小馬鹿にした表現をすることで、

当時の社会の虚無的な雰囲気を
表現しようとしたわけです。

 

この例は、まだわかりやすい方ですが、
このように前例を引用した表現

というのが、現代アートでは
主流になっています。

 

すると、これまでの美術史の
膨大な蓄積を前提知識として
持っている人にしか、

感動できない、エリート主義な
作品が増えていきます。

 

現代アートの価値基準が日本人に
とってよくわからないのには、
このような背景があります。

 

抽象画がよくわからない理由

抽象画ってよくわからない
んだけど、どうやって見たら良いの?

抽象画って誰でも描けるんじゃないの?

 

こんな意見を頂くことも多いのですが、
この辺りの混乱も美術史の前提知識が
ないから起きます。

(日本人ならわからないのが
むしろ当たり前だとは思いますが)

 

そもそも、抽象とは
どういう意味でしょうか、

意訳すると、

抽象とは、
象(かたち)を抽出したものです。

具象:象(かたち)を具(そな)えたもの

 

から、余計な部分を捨象し、

エッセンスを抽出したものが
抽象なのです。

抽象絵画が、具象絵画から
抽出したエッセンスとは色と形です。

捨象したものは、立体感、
モチーフの象徴的意味合いなどでしょうか。

 

抽出の仕方にも良し悪しがあるので、
絵をほとんど描いたことのない方が

キャンバスに絵の具をぶつけても、
良い抽象画は描けないでしょう。

 

まとめると、近代のヨーロッパ人たちが

抽象絵画を評価するように
なった経緯としては

 

「具象絵画を見飽きるほど見たので、
エッセンスだけ抽出された絵が見たい。」

と思ったからと言えるでしょう。

 

私は日本全国の百貨店美術画廊で
100枚以上絵を売ってきましたが、

売れる絵は具象絵画ばかりです。
抽象絵画はほぼ売れません。

しかし、

「具象絵画を見飽きるほど見たので、
エッセンスだけ抽出された絵が見たい。」

という状態に日本人がなれば、

今よりは抽象絵画の価値が
わかる人が増えるかもしれません。

 

アートの価値と価格

アートの価値は需要と供給の関係
で決まるようです。

人気のある物故作家は需要も高く、
供給が少ない(もう新作は生まれない)ので、

信じられないほど高価なんですね。

 

アートの価値(価格)=希少価値
と理解して良いでしょう。

 

アートの価値は景気に影響される

アートの価値、価格というのは

景気の動向によって、
大きく変動するようです。

 

近年の中国や1980年代の日本では
アートの価格が高騰し、アート市場が
賑わっていたようでした。

 

実際、80年代の日本のアート市場の
様子を知る画商さんから、
当時の話をいろいろ聞きましたが

当時は本当に100号、200号の
卒業制作でもバンバン売れたようです。

 

そんな好景気の夢のような状況を
経験している美大の指導者層が

大作主義を捨てないのは
無理もないのかもしれません。

 

アートの価値は社会的成功の証明?

アートの価値について、ヨーロッパ人や
アメリカ人の考えがわかる話を紹介します。

「君も美術館に作品を寄贈できるような
成功者になったか~。」

 

アメリカやヨーロッパの事業家には、
このようなことを言われるのを夢見て

ビジネスを頑張っている方が
結構いるようです。

 

実際、私もニューヨークに1週間ほど滞在し、
多くの美術館を巡りましたが、

美術館の入り口には、コレクションを
寄贈した方々の名まえが刻まれた
石碑がありました。

 

ビジネスを成功させ、アート作品を購入し、
美術館に寄贈するというのが、

名誉あることとして定着しているようです。

 

日本でも、「海賊と呼ばれた男」のモデル
として有名な、

出光興産創業者の出光佐三氏は
出光美術館にコレクションを
展示していますし、

最近ではZOZOTOWNの前澤社長が
バスキアの作品をオークションで
落札し話題になりました。

 

欧米ほど寄贈の習慣は一般的では
ありませんが、日本でも一部の
事業家の間では行われているようです。

 

アートの価値と作家の関係

アートの価値は、同じ作家のものでも、
制作年代によって変わります。

例えば、同じピカソの作品でも、

キュビスムの時代の作品と、
青の時代の作品では価値が
変わったりするわけです。

 

これは、存命の作家にも言えます。

駆け出しの頃は、安い号単価で
絵を販売していますが、

キャリアを積み売れるようになると、
絵の値段は上がっていきます。

 

アートの価値と感動のメカニズム

アートの価値がよくわからない…

そんな方に毎回お話しすることに
している、

ある逸話を今回はご紹介します。

 

皆さんは「ボヘミアン・ラプソディー」
という映画を見たでしょうか?

フレディ・マーキュリーの人生を描いた
大ヒット映画で、

多くの感動と話題を呼びましたね。

 

私も家族でこの映画を見に行って、
感動して涙が出たのですが、

私の父はあまり感動しなかったようでした。

 

そのエピソードがしばらくウチでは
話題になったのですが、

私の父は別に無感動な人間ではありません。

 

映画を見たのと同じ時期、家族で
妹のダンスパフォーマンスイベントを
見に行ったことがあります。

その時、父はとても感動していたようでした。

 

幼稚園の頃から、大学生になった
今までずっとダンスを続けてきた
娘の姿を見て

様々な出来事を思い起こし、
それらに対する自分の感情などが

何重にも重なった波のように
押し寄せて感動していたようです。

 

みんな頑張っていて、上手い子も多く、
感動できるパフォーマンスでしたが、

「ボヘミアン・ラプソディー」だって、
それに負けないクオリティーの作品
だったはずです。

 

なぜ、こんなことになるのか?

 

それは、人間は、作品それ自体の
クオリティーを見て感動する
のではないからです。

 

個人的な経験や知識、などの

個人的な人生の文脈と、
作品を重ね合わせて「感動」するのです。

 

難解な現代アートを見て「感動する」
専門家の頭の中では

同じことが起きています。

 

一般人には一見なんだかわからない
アート作品をみて、

過去の美術史上の名作と、
それに関する批評、それらに対する
自分の感情などが

何重にも重なった波のように
押し寄せて感動するのです。

 

アートの価値がわからない理由

アートの価値や感動のメカニズム
がわかると

日本人が西洋のアートの価値が
わからないのは無理もない気がします。

 

過去の美術史上の名作と、
それに関する批評、

それらに対する自分の感情などが

何重にも重なった波のように
押し寄せて感動する

 

同じようなことが我々が枯山水や
金継ぎされた茶碗を見たときに
起きるのではないでしょうか?

 

アートの価値を決めていた人たち

アートの価値を決定し、世に向け
発信していたのは美術館や学芸員といった
美術のエリートでした。

 

美術のエリートが認めた価値ある
アート作品を美術館という

「権威ある密室」に見に行くというのが、
以前までの構造でした。

 

アートの価値を集中管理で
決めていたのです。

 

しかし、最近ではSNSでシェア
されることを前提にした
展示の流行など、

明らかに分散処理で情報を拡散
することで影響力をふるう狙い
が垣間見えます。

 

アートの価値と最新の動向

アートの価値を集中管理でエリートが
決めていた時代が終わり、

SNSなどのメディアで映える形式の
展示が影響力を持つようになりました。

 

その最もわかりやすい例が
チームラボの成功だと思います。

チームラボはYouTubeInstagram
動画広告を出し、集客しています。

 

何度も、山pやビート武の出演する
この広告を目にしますが、

「行ってみたい!」と多くの人が
思うような、

オンラインメディアとの相性バッチリな
動画広告になっています。

 

 

膨大な前提知識を要する代わりに、
大きな感動を体験できる

エリート主義な「現代アート」
は最近は流行らないようで、

より多くの人が「共感」できる
スペクタクルな作品が
力を持っているようです。

 

この変化は非常に興味深いと思っています。
チームラボの作品はおそらく10年前なら、

アートとしてではなく
「カップルのためのイルミネーション」
として理解されたと思います。

 

スマホが普及する以前

googleFacebookのアルゴリズムが
今ほど成長していませんでした。

(YouTube広告はgoogleの、
Instagram広告はFacebookのデータや
アルゴリズムを活用した結果、
影響力を持っています。)

 

これらのアルゴリズムが未熟な時代には、
アートの価値を決めるのはエリートであり、

SNSのユーザーの好みが影響力を持つことは
ありませんでした。

 

オンラインのインフラが普及した結果、
「アートの価値」における民主主義
本当の意味で完成したのです。

 

 

アートの価値がわかるオススメ書籍

アートの価値に関する本は無数にあり、
難しいものも多いですが、

今回は私が今まで読んだ中で、
良かったものをチョイスしました。

是非読んでみてくださいね。

 

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