こんにちは!画家の黒沼です。
今回は果物の絵画について
ガッツリ解説していきます。
果物の絵画はシンプルなモチーフ
でありながら、
構図のバリエーションは
非常に豊かです。
描きたいモチーフが見つからないときや
構図の勉強がしたい時、
果物の絵画は非常に役に立ちます。
今回は画家の皆さんの参考になりそうな
歴史上の果物の絵画を紹介していきます。
最後に私が体験した
「果物の絵画を描いておいて良かった話」も
シェアするので
是非チェックしてみてください。
目次
顔に見える果物の絵画
![](https://i0.wp.com/kurohaku.com/wp-content/uploads/2021/01/o0480059114079823608.jpg?resize=480%2C591&ssl=1)
果物の絵画と聞いて最初に思い浮かべる
のがこの絵だと思います。
この絵はマニエリスム期の画家、
アルチンボルドが描いたものです。
当時の王様などの権力者の肖像を
果物を集めて表現する
という当時としては
極めて珍しい絵を描きました。
アルチンボルドは博物学に造詣が深く、
植物学的に正しい、植物図鑑のような
精緻な果物の絵を描きました。
アルチンボルドの絵というと
果物の絵が有名ですが
![](https://i0.wp.com/kurohaku.com/wp-content/uploads/2017/11/lgp01a201310290800.jpg?resize=721%2C1024&ssl=1)
他にも本ばかりを集めた絵や、
花ばかりを集めた絵など
いろいろなモチーフを組み合わせて
肖像画を描いています。
最初期の果物の絵画
![](https://i0.wp.com/kurohaku.com/wp-content/uploads/2017/11/35c7a09d243a97869dff202980dba42a-fruit-painting-renaissance-art.jpg?resize=518%2C420&ssl=1)
果物が主役の絵画を最初に描いた画家は
カラバッジョだとされることが多いようです。
それまでの絵画は、歴史画や肖像画が多く、
静物や風景はそれらのモチーフの脇役の
ような扱いだったようです。
カラバッジョが描いたこのリンゴの
静物画は「生命のはかなさ」を表現した
「ヴァニタス」と呼ばれるテーマで、
これ以後のヨーロッパで数多く
描かれることになります。
このリンゴの絵は命のはかなさを
表現するため、よく見ると
虫食いにあっているようです。
16世紀スペインの果物の絵画
![](https://i0.wp.com/kurohaku.com/wp-content/uploads/2021/01/0286.jpg?resize=728%2C460&ssl=1)
果物の絵画は16世紀のスペイン
でもよく描かれました。
このような果物や食器など、
厨房においてあるような物を
モチーフに描かれた
当時のスペイン絵画を
ボデゴン(厨房画)と呼びます。
果物のモチーフとしては
マルメロがよく登場しますね。
このシンプルで静かな雰囲気の絵画は、
この時代の少し後のスペインの画家、
スルバランも影響を与えています。
![](https://i0.wp.com/kurohaku.com/wp-content/uploads/2021/01/d09edb3bc65a6cbba27faa9ddc3749bf-1024x568-1.jpg?resize=723%2C401&ssl=1)
この時代のスペインの絵画は
フレッシュな果物の絵画にもかかわらず
非常に厳格で厳かな雰囲気が
漂っていますが、
これはスペインのストイックな
カトリックの文化を反映しているようです。
ラテンなノリで人生を楽しんでいそうな
スペイン人がこういう絵を描くのは
ちょっと意外ですね。
![](https://i0.wp.com/kurohaku.com/wp-content/uploads/2021/01/9374615.jpg?resize=415%2C339&ssl=1)
実は私はこの時代のスペインの画家
サンチェス・コタンという画家の絵が
好きでよく模写していました。
ただの果物や野菜が緻密な描写と
強烈なライティングのおかげで
神秘的な儀式ののように見えますね。
17世紀オランダの果物の絵画
![](https://i0.wp.com/kurohaku.com/wp-content/uploads/2021/01/unnamed.jpg?resize=512%2C311&ssl=1)
果物の絵画で最もフレッシュな
フレミッシュの方々の絵です。
厳密にはこの時代はオランダは
フランドルとオランダに分かれていて
フランドル=フレミッシュ
オランダ=ダッチ
なのですがこれらの両国の絵は
よく似ています。
非常にフレッシュで宝石のように
輝く果物の油絵を描いています。
この時代の画家の描く空間や質感は
本当にリアルで瑞々しく修業時代の
私はかなり影響を受けました。
![](https://i0.wp.com/kurohaku.com/wp-content/uploads/2021/01/a-still-life-with-fruit-and-lobster-1650-jan-davidsz-de-heem.jpg?resize=728%2C553&ssl=1)
この時代の画家の果物の絵画は
画面構成が非常に見事ですね。
![](https://i0.wp.com/kurohaku.com/wp-content/uploads/2017/12/20091129232529e27.jpg?resize=444%2C369&ssl=1)
近代絵画の巨匠で色彩の天才と呼ばれた
マティスも修業時代、この時代の絵画を
模写して構図を勉強したんだそうです。
セザンヌの果物の絵画
![](https://i0.wp.com/kurohaku.com/wp-content/uploads/2017/12/painting.jpg?resize=728%2C562&ssl=1)
果物の絵画、特にリンゴの絵で
最も有名な絵はおそらく
セザンヌの絵画でしょう。
セザンヌの絵画は決して現実を
リアルに再現したものではありません。
リンゴの絵も言われなければ
赤い丸にしか見えないものもあります。
セザンヌはモチーフをモチーフらしく描く
ということよりも
画面上に色彩と形が美しく
配置することを追求しました。
日本の果物の絵画
果物の絵画を描いた日本人を
ここからは紹介していきます。
速水御舟
![](https://i0.wp.com/kurohaku.com/wp-content/uploads/2021/01/painter_hayami_gyoshu04.jpg?resize=468%2C352&ssl=1)
速水御舟の絵画にはよく
果物や食器といったモチーフが登場します。
16世紀スペインのボデゴン(厨房画)
と似たモチーフのチョイスですね。
この、今日食べたものを画面に収め、
インスタにアップしたみたいな
速水御舟の私生活を感じる構図や
モチーフのチョイスは
なんだか和みますね。
絵手紙が好きな方は構図や
モチーフのチョイスが参考に
なるかもしれません。
岸田劉生
![](https://i0.wp.com/kurohaku.com/wp-content/uploads/2021/01/shonborikun_dasoku_RyuseiKishida_001.jpg?resize=728%2C559&ssl=1)
こちらは岸田劉生のリンゴの絵ですね。
近代日本の静物画はこういうシンプルで
静かな雰囲気の物が多いですね。
岸田劉生といえば麗子像で有名ですが
個人的にはリンゴの絵の方が好きです。
![](https://i0.wp.com/kurohaku.com/wp-content/uploads/2021/01/1200px-Kishida_Ryusei_Young_Girl_Standing.jpg?resize=728%2C878&ssl=1)
このリンゴの絵は岸田劉生の家族観や
人間観を表現しているようで
何かスペインバロックに通ずる
神秘的な雰囲気を感じますね。
果物の有名な絵画作品いろいろ
![](https://i0.wp.com/kurohaku.com/wp-content/uploads/2020/12/複製画.jpg?resize=728%2C410&ssl=1)
果物の絵画の有名どころは
他にもいろいろあります。
モチーフのチョイスや構図が
参考になりそうな作例を
いくつか簡単に解説していきます。
シャルダン
![](https://i0.wp.com/kurohaku.com/wp-content/uploads/2017/11/d2d3be5b.jpg?resize=429%2C336&ssl=1)
シャルダンはロココ期の画家で数多くの
静物画を描きました。
この時代の絵画は底抜けに明るい、
軽妙な絵が多いのですが
(ロココ期の絵画は美術史家の
間では評価が低いようです。)
シャルダンだけは別格!
という評価が一般的
なんだそうです。
私もシャルダンの厳粛で神秘的な雰囲気が
好きで修業時代よく模写をしていました。
アンリ・ファンタン・ラトゥール
![](https://i0.wp.com/kurohaku.com/wp-content/uploads/2021/01/henri.jpg?resize=673%2C548&ssl=1)
アンリ・ファンタン・ラトゥール
の作品も人気が高いですね。
彼の作品は画像ではなかなか
魅力が伝わりづらいのですが
実物は絵の表面が
かなりボコボコしています。
絵に近づいてみると
ザラついた桃の質感や
花びらの凹凸が、絵の具の厚みで
表現されているということに
ビックリします。
フラットな画面に緻密に描いた
絵ではないんですね。
マグリット
![](https://i0.wp.com/kurohaku.com/wp-content/uploads/2018/01/the-listening-room-1952.jpg?resize=728%2C600&ssl=1)
こちらはかなりの
“変わり種”ですね。
リンゴが実際の何百倍もの
大きさになっていますね。
マグリットはこのように
あり得ないサイズ感や
モチーフの組み合わせを利用して
非日常的な、シュールな
雰囲気を演出する
「デペインズマン」という手法を
多用しました。
きっとマグリットはリンゴではなくて
も良かったんだと思います。
モチーフのサイズ感がおかしい
というのが重要なんですね。
果物の絵画が売れた時の話
![](https://i0.wp.com/kurohaku.com/wp-content/uploads/2020/09/IMG_4714ringo.jpg?resize=728%2C878&ssl=1)
果物の絵画はやっぱり人気が高いなぁ
こう感じたエピソードを紹介していきます。
以前、油絵の基本的な描き方を
動画で解説するために、
リンゴの絵を油絵で
描いたことがあります。
この絵は描き方動画を
作るためだけに描いたので
展示する予定もなかったですし、
販売するつもりもなかったのですが
なんとミラクルが起きました。
この絵のメイキング画像を
FacebookやInstagramで
アップしたところ
なんと
この絵はおいくらですか?
というメッセージが
初対面のお客様から入ったのです。
実際こんな感じで飾って頂けました。
![](https://i0.wp.com/kurohaku.com/wp-content/uploads/2020/11/115946659_329412345137450_2490593911423806773_n.jpg?resize=446%2C595&ssl=1)
このエピソードについては動画の最後で
詳しく解説しているので
是非チェックしてみてください↓