どうも 絵画をたしなむ
を運営する画家の黒沼です。
これまで、記事を書いてきて
画家の名前を引用して説明したり
することが結構あり、
話が専門的になりすぎると
いうことが気になっていたので、
これから西洋美術史についての
記事を易しく書いていこうと思います。
初心者でも、玄人でも楽しめる記事を
目指して頑張って書いていきたいと思います!
今回は中世のロマネスク美術
について解説します!
当時の音楽とともにお楽しみください!
目次
中世ロマネスク美術とは
![](https://i0.wp.com/kurohaku.com/wp-content/uploads/2017/11/Pisa-Tower-Wallpapers-41-300x225.jpg?resize=377%2C283)
ロマネスク美術とは、
960年頃~1270年頃
ドイツ、フランス、スペインに
いたる地域で流行した美術様式です。
(イタリアやトルコ、ギリシャ地域では、
ビザンティン美術がロマネスク期にも
続いたようです。)
ロマネスク期の美術は黙示録をテーマ
としたものが多かったようです。
ちょうどこの頃、キリストの死後1000年
が近づいていました。
「ヨハネの黙示録」にはキリストの
死後1000年には、
戦争、疫病、災害、怪物などに襲われ、
世界が滅ぶ
という予言があり、世界の終わりの時、
「最後の審判」が行われ、悪人は地獄へ、
信仰の篤い善人は天国へ送られる
![](https://i0.wp.com/kurohaku.com/wp-content/uploads/2017/11/dfba6e9df5474883f093039103a2be73-bamberg-apocalypse-232x300.jpg?resize=297%2C384)
と書かれていました。このため、
紀元後1000年前後のロマネスク期には、
黙示録がよく美術のモチーフになったんですね。
また、多くの人が最後の審判の日に備え、
善行を積むべく、聖地巡礼が流行しました。
一生に一度はお伊勢参りに行きたい
と思った江戸時代の人々と似ていますね。
巡礼地の多くは聖遺物(聖人の持ち物や遺骨)
のある修道院や聖人の墓地でした。
![](https://i0.wp.com/kurohaku.com/wp-content/uploads/2017/11/t02150500_02150500124877104941-129x300.jpg?resize=253%2C588)
聖遺物を持つ修道院はこのような、
豪華な聖遺物箱に収められ、
巡礼者を迎えていました。
聖遺物のない修道院は巡礼者が
来ないため、聖遺物箱が
盗まれることもあったようです。
![](https://i0.wp.com/kurohaku.com/wp-content/uploads/2017/11/200901100058371-196x300.jpg?resize=247%2C378)
ちなみに、聖遺物のひとつで、
都市伝説としても有名な聖骸布は
最新の科学的な調査によれば、
ロマネスク末期~ゴシック期に
「作られた」ようです。
修道院も集客に苦労していたんですね…
巡礼地の中でも特に人気のあったのが、
十二使徒大ヤコブの遺骨の納められた、
スペインの
サンチャゴ・デ・コンポステラ
であったようです。
![](https://i0.wp.com/kurohaku.com/wp-content/uploads/2017/11/img_02-227x300.jpg?resize=369%2C488)
中世ロマネスク期の建築様式、有名な教会建築
![](https://i0.wp.com/kurohaku.com/wp-content/uploads/2017/11/20091012_9692911-300x201.jpg?resize=426%2C285)
ロマネスク期の建築は
素朴で禁欲的です。
ヨーロッパの教会と言えば、
ステンドグラスのある
豪華な建築をイメージするかたも
多いかもしれませんが、
これは、ゴシック期の教会の
特徴なんですね。
![](https://i0.wp.com/kurohaku.com/wp-content/uploads/2017/11/200802121748241-300x200.jpg?resize=425%2C283)
ロマネスク期の建築はとにかく、
禁欲的で、まさに僧侶の
修行空間といったかんじです。
最近流行りのミニマリストの部屋
と似たような、禁欲的な雰囲気がしますね。
![](https://i0.wp.com/kurohaku.com/wp-content/uploads/2017/11/thoronet21-232x300.jpg?resize=259%2C335)
私の最も好きな教会建築は
実はフランスのロマネスク期の
ル・トロネ修道院なんです。
![](https://i0.wp.com/kurohaku.com/wp-content/uploads/2017/11/811eed57eef1e21d5bd5956e3f94e4821.jpg?resize=368%2C276)
このように、重厚な厚い石造りの壁に
小さな窓があり、神秘的な一筋の光
が差し込んできます。
![](https://i0.wp.com/kurohaku.com/wp-content/uploads/2017/11/200802121748241-300x200.jpg?resize=378%2C252)
当時のガラスは今ほど透明では
ありませんでしょうから、
薄明かりの中での瞑想的な空間
だったんですね。
ピサの斜塔もロマネスク建築
![](https://i0.wp.com/kurohaku.com/wp-content/uploads/2017/11/pisa-1247452_12802.jpg?resize=728%2C410&ssl=1)
ガリレオガリレイも落体の法則の
実験に活用したピサの斜塔
は傾いています。
傾いていなかったら今ほど
有名ではなかったかもしれませんね。
傾いてしまった原因は地盤が
柔らかかったことによるようです。
度重なる工事のおかげでなんとか
今の角度を保てているようです。
ピサの斜塔はとにかく大きい
イメージがあったので、ゴシック建築だと
勘違いしていたのですが、ロマネスク建築のようです。
【中世の建築様式】ロマネスク建築とゴシック建築の違い
![](https://i0.wp.com/kurohaku.com/wp-content/uploads/2017/11/saint-coloman-3092260_12802.jpg?resize=728%2C485&ssl=1)
中世の有名な建築様式といえば
ロマネスク建築とゴシック建築ですが
両社の違いは下記のような感じです。
ロマネスク建築
・禁欲的
・壁が分厚い
・田舎に多い
・丸い石造アーチ
ゴシック建築
・豪華絢爛(ステンドグラスなど)
・壁が薄い(新工法フライングバットレスのおかげ)
・都市に多い
・先のとがったアーチ
1発で違いを見分けるには
アーチ部分に注目しましょう。
↓ロマネスク建築の丸いアーチ
![](https://i0.wp.com/kurohaku.com/wp-content/uploads/2017/11/goal-2789803_12802.png?resize=728%2C485&ssl=1)
↓ゴシック建築のとがったアーチ
![](https://i0.wp.com/kurohaku.com/wp-content/uploads/2017/11/church-window-366817_12801.jpg?resize=728%2C485&ssl=1)
中世ロマネスク期の有名な彫刻作品
![](https://i0.wp.com/kurohaku.com/wp-content/uploads/2017/11/arte-romanica-0401-300x221.jpg?resize=407%2C300)
ロマネスク期には、従来の木造にかわり、
重厚な石造の修道院が数多く建てられます。
ロマネスクとは「ローマ風の」
という意味があるのですが、
ロマネスク期の建築にはローマ風の
アーチ構造が多く用いられました。
![](https://i0.wp.com/kurohaku.com/wp-content/uploads/2017/11/o04480317128575609571-300x212.jpg?resize=391%2C276)
ロマネスク期の建築には、
数多くの奇怪な石像が施されています。
![](https://i0.wp.com/kurohaku.com/wp-content/uploads/2017/11/laurens1.png?resize=321%2C241)
これらの石像は枠の法則にのっとり、
柱や扉口の形に沿うような、
押し込められた形をしています。
![](https://i0.wp.com/kurohaku.com/wp-content/uploads/2017/11/p_kanazawa_0021.jpg?resize=285%2C377)
これらの石像にはキリスト教とは
関係のない、現地の神話に
登場する怪獣などもいます。
これは、ヨーロッパ中から
聖地巡礼で訪れた観光客を
喜ばせるためのサービス
だったようです。
きっと、アニメの舞台を巡る
旅行と同じく
聖書の舞台を巡る旅も
楽しい旅行だったのでしょう。
中世ロマネスク期の有名な絵画作品、技法
![](https://i0.wp.com/kurohaku.com/wp-content/uploads/2017/11/catar41-300x270.jpg?resize=398%2C358)
ロマネスク期の建築には
多くのフレスコ画が施されています。
ビザンティン美術の時代にはモザイク壁画
が多かったのに対し、
ロマネスク期の建築には
フレスコ画が多く描かれています。
![](https://i0.wp.com/kurohaku.com/wp-content/uploads/2017/10/wall-1792574_1920-300x205.jpg?resize=300%2C205)
フレスコ画とは、壁に塗った
モルタルが乾かないうちに
水に溶いた顔料で描く技法です。
絵の具の定義のページで書いた通り、
本来は水に溶いた顔料だけでは
壁に絵の具は定着しません。
(媒材という糊成分が必要です)
しかし、フレスコ技法は壁の乾燥
とともに絵の具が定着するので、
媒材はいらないんですね。
ただ、この技法は描き直しが聞かず、
素早く描く必要があるので、
職人芸が試される技法なんですね。
キャンバスが四角い理由
皆さんは
「なぜキャンバスは四角いのか」
と考えたことがありますか?
実はこれは絵画は歴史的に、
もともと建築の一部であったから
なんですね。
ポンペイの記事でも書いたように、
絵画はもともと、建築の壁と一体でした。
![](https://i0.wp.com/kurohaku.com/wp-content/uploads/2017/11/Pompeii_Fresco_0011-300x290.jpg?resize=300%2C290)
ポンペイの場合は部屋を
より広く見せるために
![](https://i0.wp.com/kurohaku.com/wp-content/uploads/2017/11/dfba6e9df5474883f093039103a2be73-bamberg-apocalypse-232x300.jpg?resize=257%2C333)
今回のような修道院の場合は
文字の読めない巡礼者に
聖書の物語を伝えるために
絵画は描かれました。
絵画は建築の一部であった
とはこういうことなんですね。
まとめ
![](https://i0.wp.com/kurohaku.com/wp-content/uploads/2017/11/arte-romanica-0401-300x221.jpg?resize=300%2C221)
今回はロマネスク期の美術について
紹介しました。
神秘的で素朴な教会、それとは
対照的な奇怪で愉快なモンスターは
見ていて本当に飽きませんね。
ロマネスク期の特徴をまとめると
・枠の法則に則った奇怪な柱頭彫刻
・建築の一部としての絵画
という感じですね。
次回は中世のゴシック期の美術
について紹介します。
それではまた。
↓西洋美術史についてはコチラ↓
![](https://i0.wp.com/kurohaku.com/wp-content/uploads/2018/06/画家と美術史-300x176.jpg?resize=725%2C422)