こんにちは!画家の黒沼です。
今回は木に絵の具をキレイに
塗る方法を解説していきます。
職人魂むきだしで、マニアックな
技法材料論を語っていくので
是非チェックしてみてください。
目次
木に塗れる絵の具の種類
「木に塗る絵の具はどれを
選べば良いですか?」
学校の美術の先生をやっていた頃、
美術部の子にこんな質問を
よくもらいました。
・水彩絵の具
・ポスターカラー
・アクリル絵の具
・油絵具
などなど部室には
いろんな絵の具がありましたが
一番のオススメは
アクリル絵の具です。
木に塗る絵の具はアクリル絵の具がオススメ
アクリル絵の具は非常に便利で
使いやすく、何にでも描けます。
アクリル絵の具は油性の塗膜
(油絵の上など)以外なら、
基本的に何にでも
描くことが出来ます。
また、アクリル絵の具は塗膜が
柔軟なので湿度の変化で伸縮する
木の板への塗装にも向いているのです。
また、アクリル絵の具は
乾くと塗膜が耐水性になるので
塗った木を手で触っても
塗膜が剥げることはありません。
木に塗る絵の具は水彩絵の具じゃダメ
もちろん水彩絵の具で
木を塗ることもできますが
水彩絵の具は水で薄めて
半透明な状態で使う絵の具なので、
木の色が透けて見えてしまいます。
また水彩絵の具は乾燥後も水をかけると
塗膜が溶けるので、手で触ると
湿気で塗装が剥げることも多いです。
なのでオススメしません。
木に塗る絵の具は油絵の具じゃダメ
もちろん油絵の具で
木を塗ることもできますが
油絵具は乾燥に
時間がかかります。
また木の上にダイレクトに
塗るのはオススメしません。
油絵の具で木を塗る場合、
下地を作る必要があります。
油絵の具に含まれる油を木が過剰に
吸い取ってしまい、
絵の具の定着力が落ちて
剝離するのです。
(何年も経ってから剥がれ
落ちることが多いです。)
また
木は周囲の湿気を吸い込んで
伸縮します。
油絵の具はアクリル絵の具と違って、
塗膜が柔軟ではないので
木の伸縮に塗膜が耐えられず、
塗膜がひび割れることもあります。
(何年も経ってから
ひび割れることが多いです。)
数百年前の油絵の名作の表面が
ひび割れているのはこれが原因です。
木に絵の具を塗る手順
さてさてここでは木に絵の具を
キレイに塗るための手順を
解説していきます。
時間も手間もかかりますが、
しっかり手順を守って塗ると、
市販の積み木のようなクオリティーの
塗装ができるので
是非実践してみてください。
今回はアクリル絵の具で
木を塗る手順を解説していきます。
(動画でも解説しているので
是非チェックしてみてください。)
サンドペーパーで目立て
まずは買ってきた木材を
サンドペーパー(紙ヤスリ)で軽く
表面を削っていきます。
市販の木材はささくれ防止のために
表面が塗装されていたり
非常にフラットな
状態だったりします。
非常にフラットな表面に
塗装するのは難しい。
これを覚えておいてください。
サンドペーパーで木材の表面を若干
削ることで木材をむきだしにして、
表面をザラザラにするわけです。
すると、ザラザラに絵の具が
しっかり食いついて
強い塗膜を作れるのです。
この工程を「目立て」と言います。
下地を塗る
目立てが終わったら、そこに
下地材を塗っていきます。
木の上にいきなり絵の具を塗ると、
どうしても木の黄土色が
透けてしまったり、
木目が透けてしまいます。
そこで白色の下地材を挟むことで、
この上に塗る絵の具の発色を
良くするわけです。
最も手軽に使える下地材は
アクリル系のジェッソだと思います。
若干水を加えて、泡立たないように
混ぜて、何回かに分けて
薄く塗り重ねましょう。
絵の具を塗る
下地材を塗り終えたら、
絵の具を塗っていきます。
この絵の具を塗る作業も1回で
ぼったり厚く塗るのではなく
若干水を加え、柔らかいマヨネーズ
くらいの固さになった絵の具を
何回かに分けて塗ると
きれいな塗膜を作ることが出来ます。
ニスがけ
絵の具を塗り終えたら仕上げに
保護用のニスを塗っていきます。
アクリル絵の具塗りっぱなしの状態
だとどうしても、
表面に微かなベタつきが
残っています。
絵画などのように表面を触ることのない
ものを塗る場合は問題ないですが
積み木のように、表面を何度も
触るものを塗る場合は、
保護用のニスを塗るべきでしょう。
保護用のアクリル系ニスを
塗っておくと、
アクリル板の表面のような
硬質な質感になり、
塗膜がべたついたり、
傷つくこともないでしょう。
ニスがけというと、ツヤツヤの
表面をイメージする方も
多いかもしれませんが
アクリル系のニスには
ツヤがないものもあります。
ツヤの有無はお好みで
チョイスしましょう。
木のパネルに絵の具を塗る下準備
さてここからは
木の板に絵の具を塗る方法
つまり「板絵」の絵画技法を
解説していきます。
ここまでに紹介した方法や考え方と
基本は同じなので、
ここまで読んでくれた方は
板絵の絵の具の組成が
すんなりイメージできると思います。
動画でも解説しているので
是非チェックしてみてください。
(若干異なる部分もあります。)
伝統的な板絵の組成も紹介していくので
是非チェックしてみてください。
木のパネルの選び方
画家さんからよく頂く質問の一つが
「木のパネルはラワンと
シナベニヤどちらが良いですか?」
というものがあります。
結論から言えば、絵画用のパネルは
シナベニヤ一択です。
ラワンのパネルはシナベニヤに比べ
安いのですが致命的な弱点があります。
ラワンは絵の具や下地材を塗ると、
アクが染み出てくるのです。
絵具を塗るとじわーっと茶色い半透明な
アクが染み出て絵の具の色が
変わってしまうのです。
ラワンのパネルのための「アク抜き剤」
というものも売っており、
これを塗ればこういった問題は
起きないようですが
最初からシナベニヤのパネルを
買うべきだと思います。
シナベニヤのパネルはカツラ向きした
薄い木の繊維を縦横交互に
貼り合わせて作っているため
大きいサイズの板でも
反りが少ないのが特徴です。
(天然の一枚板などは湿度の変化で、
木の繊維が伸縮し大きく反る
ことがあります。)
シナベニヤは表面がサラサラで
フラットな下地を作りやすい
というものも特長です。
木にアクリル絵の具を塗る場合
アクリル絵の具で板絵を描く
ときの作業工程を紹介していきます。
サンドペーパーで目立て
木のパネルの表面を
サンドペーパーで目立てます。
アクリル系ジェッソで塗る
アクリル系のジェッソを
何回かに分けて塗っていきます。
アクリル絵の具で絵を描く
下書きをしてアクリル絵の具
で描いて行きます。
木に油絵の具を塗る場合
油絵の具で板絵を描く
ときの作業工程を紹介していきます。
動画でも解説しているので
是非チェックしてみてください
サンドペーパーで目立て
木のパネルの表面を
サンドペーパーで目立てます。
寒冷紗を下地材で張り込む
ここからは油絵用の
絵画下地を作っていきます。
まずは寒冷紗というガーゼを
張り込んでいきます。
予め用意した下地剤を糊代わり
にして寒冷紗を板に
張り込んでいきます。
下地材には伝統的には
ジェッソ:石膏地(硫酸カルシウム)
ムードン:白亜地(炭酸カルシウム)
が使われました。
硫酸カルシウムや炭酸カルシウムの粉
を膠水で練って板に塗布して
絵画用下地は作られます。
下地材を寒冷紗が埋まるまで塗る
寒冷紗の布目が見えなくなるまで
何層も下地材を塗っていきます。
一度塗った下地材が乾燥したのを
確認して次の層を塗る
この作業を繰り返していきます。
表面を研磨
布目の凹凸が見えなくなったら
表面をサンドペーパーで
軽く研磨します。
油絵の具を塗る
下書きをしたのちに油絵の具で
絵を描いて行きます。