どうも 絵画をたしなむ を運営する画家の黒沼です。
これまで、記事を書いてきて
画家の名前を引用して説明したりすることが結構あり、話が専門的になりすぎる
ということが気になっていたので、これから西洋美術史についての記事を易しく書いていこうと思います。
初心者でも、玄人でも楽しめる記事を目指して頑張って書いていきたいと思います!
今回はバロック期の美術について解説します!
当時の音楽とともにお楽しみください!
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目次
バロックって何?
・ゆがんだ真珠?
前回のマニエリスム期の記事でも書きましたが、ミケランジェロやラファエロのルネサンス期の作品は越えられない壁になっていました。
先輩が偉大過ぎて、後の画家は影響を受けざるを得なかったんですね。
マニエリスム期に続く時代をバロック期といいます。
バロックは「ゆがんだ真珠」を意味します。
真珠とはもちろん、完璧な美をもつルネサンス期のことです。
ルネサンス期の安定した三角構図↑ではなく、より動きのある構図。↓
↑絵の中で目線がグルグル動くようなダイナミックな構成の絵画ですね。
ルネサンス期にはないようなスポットライトのような強い光が描かれたりします。
・バロック美術はプロパガンダ?
バロック期に差し掛かったころ、それまで絶大な権力を持っていた、ローマカトリック教会はピンチを迎えていました。
前回のマニエリスム期の記事にも書いた通り、この頃、宗教改革が起こります。
この頃の歴史はこんな感じ
ローマカトリック教会が免罪符を売ってお金儲け
↓
教会の腐敗を訴え、マルティン・ルターらが宗教改革を起こし、プロテスタントが生まれる。
↓
信者がプロテスタントに流れ、ローマカトリック教会の信者が減る。
↓
焦ったローマカトリック教会が対抗宗教改革を行う。
バロック美術はこの対抗宗教改革に利用されます。
つまり、バロック美術は信者を取り戻すためのカトリック側のプロパガンダ(政治宣伝)だったわけです。
そんなわけで、バロック美術には、オーバーでダイナミックな演出が多いんですね。
これはカトリック教会が力を持った、イタリア、スペイン、フランス、フランドルに顕著な傾向です。
逆に、プロテスタント側であった、オランダは、貿易で財をなした商人が、絵を買うことが多かったので、↑市民の好む絵が多いんですね。
これはヴェネチア派がフィレンツェ派に比べ、庶民的であるのに似てますね。
ちなみに対抗宗教改革といえば、バロック美術による宣伝の他にイエズス会の創設も有名です。
信者が減ったので、アジア方面で布教して解決しようとしたんですね。日本にもこの頃、フランシスコ・ザビエルがきました。
・画家が多すぎた?
ルネサンス期の絵画↑は多くが昼間の明るい場面を描いたものでした。
このため、人物の形が明瞭に見える絵が多かったんです。
しかし、バロック絵画になると、強い光と、それを強調するための深い闇が描かれるようになります。
薄暗い部分ではモチーフの形が不明瞭になります。
このため、モチーフの形全てがくっきりと描けていなくても、絵画として成立するんですね。
つまり、バロック絵画はルネサンス絵画よりも「それっぽく描く」のが簡単でした。
このため、バロック期には画家が大量に現れ、画家余りになったそうです。
バロック期にはルネサンス期以上にヨーロッパ中の様々な国で有名な画家が登場します。
今回はイタリア、スペイン、フランス、フランドル、オランダの順に解説していきます。
イタリアのバロック美術
・カラバッジョ
イタリアバロックで最も有名な画家はカラバッジョです。
カラバッジョは劇的な光で生々しいほどリアルな絵を描きます。
グロテスクな場面をリアルに描いたり、娼婦をモデルにしたりして、絵の購入を断られたこともよくあったようです。
終いには殺人事件を起こすなど、トラブルメーカーだったようですが、多くの画家に影響を与えました。
↑紙幣にもなっています。
また、カラバッジョは初めて静物画を描いた画家としても有名なようです。
このように、物が絵の主役になることはそれまでありませんでした。
しかし、この静物画も虫食いのリンゴがモチーフで、「命の儚さ」というテーマが込められています。
バロック美術にはカラバッジョ以外にも、このような命の儚さをテーマに描いた絵画が多く、ヴァニタス画と呼ばれます。
・コルトーナ
コルトーナのこの天井画は、教会の建築と一体になっていますね。
教会を訪れた信者が聖書の世界の中にいるような体験ができる壮大な演出がなされています。
これは対抗宗教改革の一環のカトリック信者へのサービスの優れた一例ですね
スペインのバロック美術
・ベラスケス
ベラスケスは若くして宮廷画家となった画家です。
王族の肖像画を多く手掛けており、非常に顔の表情を描くのが巧い画家だったようです。
本人も肖像画には自信があったようで、「私以外に顔を描ける画家を知らない」という言葉を残しているようです。
ギリシャ神話のワンシーンをどこにでもいそうな、おじさんの飲み会のように描き、話題になったようです。
当時のスペインは厳格なカトリック教国で、異教の神を描くのはタブーでした。
しかし、ベラスケスは宮廷画家だったため、自由に制作できたようです。
・ムリリョ
ムリリョは多くの宗教画を残していますが、庶民的で可愛らしい表情を描くのが得意だったようです。
当時のスペインではペストが流行し、町中死体だらけでした。
街の人々の求めたのは厳格な宗教画ではなく、優しく微笑む可愛らしいマリア様だったんですね。
・スルバラン
スルバランはムリリョとは逆に厳格な職人タイプの画家だったようです。
禁欲的で、緊張感のある雰囲気の絵画を数多く残しています。
フランスのバロック美術
バロック期のフランスでは、他の国のように劇的でダイナミックな表現ではなく、古典的でアカデミックな表現が育ちました。
・ラ・トゥール
ラ・トゥールはカラバッジョに影響を受けましたが、カラバッジョとは異なり、灯のような静かな光を描きました。
カラバッジョの絵は光源が画面の外にあるのに対し、ラ・トゥールは画面の中にある というのも特徴です。
・プッサン
この頃のフランスはイタリアに追いつくべく、急速に美術アカデミーが大きくなった時代でした。
そのアカデミー派の代表がプッサンで、アカデミー派らしく、色彩よりもデッサン重視、感覚よりも理性重視の絵画を描きました。
フランス人は理性重視のお国柄なようで、これ以降の絵画にも、この傾向が続きます。
モネもよく橋のある風景画を描きました。↑
具体的には、画面に必ず計測できるモチーフ(風景画の中に橋とか)を描くんですね。
フランドルのバロック美術
・ルーベンス
ルーベンスは非常に多才な人物で、画家で、経営者で、外交官でした。
画家と言えば、作品の構想から仕上げまで、一人でこなすというイメージがあるかもしれません。
しかし、当時の画家の多くは工房を経営し、チームワークで制作していました。
現代の、漫画家や映画監督のような感じですね。
構図決めや、主役の顔部分を親方が担当し、それ以外の部分を工房の弟子が分担で描くというシステムをとることで、大量の制作依頼に応えたようです。
ルーベンスの絵画の特徴は激しいタッチと色彩です。絵の見せ場になる部分のみ、緻密に描き、それ以外は粗い筆跡を残すという仕上げだったんですね。
・ヴァン・ダイク
ヴァン・ダイクはルーベンスの陰に隠れてしまいがちですが、同じ時代のフランドルの優れた画家でした。
ルーベンスがフランドル(今のベルギーあたり)で活躍していたので、ヴァン・ダイクはイギリスに渡り、活躍しました。
宮廷でも活躍した画家で、多くの王族の肖像画を残しています。
ベラスケスがリアルにありのままの肖像画を描いたのに対し、ヴァン・ダイクは実物よりもカッコよく、きれいに描いたようです。
技術のみならず、優れたサービス精神を持っていた画家なんですね。
オランダのバロック美術
・レンブラント
レンブラントはバロック期で最も有名な画家のひとりです。
レンブラントは初期は劇的な光の演出の典型的なバロック絵画を描いていました。
この頃のレンブラントは順調な人生を送っていましたが、年を重ねるごとに様々な悲劇が彼を襲います。
年齢を重ねるごとに、絵は抑制のきいた色彩、厚塗りのマチエールになっていきます。
60歳の頃には、家も家族もパトロンも財産も失った、どん底の状態になっていしまいます。
しかし、この頃の深い精神性を感じる絵画をひときわ評価が高く、有名なんですね~
・フェルメール
日本では彼が最も有名なバロック期の画家かもしれませんね。
フェルメールは風俗画の画家として有名です。
風俗画とは日常の何気ないワンシーンを切り取ったような庶民の絵です。
プロテスタントの国であったオランダは教会からの影響がほとんどなかったため、裕福な市民が楽しむための絵画が多く描かれました。
フェルメールもそんな画家のひとりなんですね。
まとめ
今回はバロック期の美術について紹介しました。
バロック期になると、同じ時代の絵画でも、それぞれのお国柄が反映されてきて面白いですね。
バロック期の特徴をまとめると
・激しい動きのある画面構成
・カトリックの信者集めに貢献
という感じですね。
次回はロココ美術について紹介します。
↓西洋美術史についてはコチラ↓