額装のやり方には様々な方法
がありますね。
やり方ひとつ変えるだけで、
作品の雰囲気も大きく変わり、
まるで別物に見える!
ありがたいものに見える!
なんていうことも多いんです。
今回は日本全国で100枚以上絵を売った
経験を生かし、
様々な「飾りやすい額装のやり方」
について解説していきます。
目次
額装のやり方次第で絵の雰囲気は変わる
額装のやり方次第で絵の見栄えや雰囲気、
場合によっては構成や絵から伝わる
メッセージすら変わってきます。
オーソドックスな静物画や肖像画などは、
クラシックな雰囲気の額縁があうでしょうし
金箔などを使った、強い素材感のある
絵の場合は絵を引き立てる
落ち着いた木の額が、マッチするでしょう。
また、最近流行している、ボックスフレーム
を使えば、このように小さい絵でも
存在感のある額装ができます。
また、ボックスフレームの特性を生かし、
自由に画面の形を変えて、
現代的な見せ方の額装
にすることもできます。
ちなみに、この作品は、金の屏風が
バラバラに崩れた場面をイメージした
作品で、
3DCGのソフトを使って、ブロックが
崩れる瞬間をシミュレーションし
その形に板を糸のこぎりでカットし
そこに石膏に地塗りをし金箔を貼って
メノウで磨いて仕上げた作品です。
このように、ボックスフレームを使えば、
支持体の形を自由に選んで
構成することもできるのです。
額装のやり方次第で絵は売れる
額装のやり方を変えた瞬間、
ずっと売れなかった絵が売れた!
これまでに何度も
そんなことがありました。
また、お客様から
「絵は好みなんだけど、額縁が
好みじゃないから、
額縁を交換できるなら買いたい。」
そんな声を頂くこともありました。
実際にその要望にお応えして
額装を変えてみると、
自分で決めた額装よりも
気に入ったものになることも多いんです。
そんなことがあるたびに、
「画家は鑑賞者に育ててもらうんだなぁ。」
「お客様の声は貴重なんだなぁ。」
としみじみと思います。
最近ではそんな経験を生かし
オーダーメイド作品を受注する場合
絵の完成イメージだけではなく
額装のイメージのシミュレーション
もご確認して頂くことにしています。
額装のやり方、額の選び方のお手本
額装のやり方や
額の選び方がわからない…
そんな時には百貨店美術画廊の
展示に行ってみましょう。
百貨店の上層階には、その百貨店の
お得意様向けのギャラリーがあります。
百貨店の美術画廊は貸し画廊とは
異なり、
展示販売を強く意識しているので、
お得意様にお出ししても恥ずかしくない
「飾りやすい額装」、「間違いない額装」
の作品を数多く見ることができます。
貸し画廊の場合は、展示販売よりも、
展示料金を作家から回収することで
経営が回っている場所が多いため
販売目的で展示する意識が弱く、
額装なしで展示している場合
すらあります。
額装に関する誤解
額縁に入れず、キャンバスやパネル
むき出しで絵を展示しているケースが
よく見られますね。
実際、ニューヨークのギャラリーや、
ヨーロッパの絵画の路上販売などでも
額縁にいれず、キャンバスのままで
展示している場合もありますが
これは、
「お客様が好きな額縁を選べるように」
できた仕組みのようです。
日本では販売を前提にした、展示では
多くの場合額縁にセットした状態で
展示することが多い
ということは覚えておくと良いでしょう。
暖色は金、寒色は銀
額縁選びに迷った場合、
暖色系の絵はゴールド系
寒色系の絵はシルバー系
そんな基準で選ぶと、あまり間違いは
ないので目安にしてみると良いでしょう。
基本的にゴールド系の額縁は
部屋が明るく華やかになるため、
人気が高いです。
もし迷ったらゴールド系の額を用意すると、
絵とあわせやすいと思います。
実際、私も通販サイトで額を買う時
「あと1つ額を買えば、
送料無料になるのに…」
という時にはゴールド系の無難な額を
買うことにしています。
デッサンや版画などモノクロの作品の場合は
安易にゴールドにしないほうが良いかもしれません。
作品よりもゴールドの額が目立ってしまい
鑑賞の邪魔になる場合があります。
お店で額装してもらうやり方
額装のやり方がよくわからない…
そんな場合は、額縁を購入した店に
絵を持っていき、額装してもらうのも
良いでしょう。
有料の場合も多いですが、
ヒンジのねじ止めから、絵の固定から、
紐の結び方、アクリル板の静電気防止処理
まで
トータルでやってくれるので、
慣れていない方にはおすすめです。
重い額の場合ケブラーを使おう
額に入った状態で、両手で抱えるのも
大変なくらい重い作品の場合
額の紐をケブラーというものに
交換してもらうと良いでしょう。
多くの場合、額縁売り場のスタッフ
に言うと奥から出して交換してくれます。
ケブラーとは登山用の命綱などに
使われる素材で重い額縁でも
切れることのない強靭な紐です。
自分で額装するやり方
額装のやり方は1度覚えれば、
さほど難しいことではないので
展覧会を定期的に開く画家さんや
画廊スタッフの方は
一通り覚えておくと良いでしょう。
額装の際にあると便利な道具
額装のやり方を覚える時にあると
便利な道具をリストアップしてみました。
静電気防止スプレー
昔はほとんどの額が
ガラスで保護されていました。
しかし、最近ではアクリル板が
人気のようです。
(特に震災以降はアクリルの額が
人気なんだそうです。)
アクリル板は配送時に割れる心配がない。
軽い、紫外線をカットできるものもある。
など様々なメリットがあります。
しかし、一つだけ弱点があります。
それは静電気を帯び、
ホコリがつきやすいのです。
そこで、静電気防止スプレーを吹きかけ
コーティングしておきましょう。
私が普段使っているオススメは
「SEリリーフ」です。
べたつかず、拭き跡もつかず、
値段も手頃でオススメです。
メガネ拭き
額縁も長く使っていると、
何度も拭いた結果
「磨きキズ」がつくことがあります。
しかし、メガネ拭きを使えばあまり、
そういった問題は起きません。
ケブラー
これは重い作品限定ですが、両手で
抱えるのも大変なくらい重い作品は
紐をケブラーに交換すると良いでしょう。
ドライバー
ドライバーはヒンジ留めや、
ボックスフレームの板に
作品を固定する際に使います。
額縁の紐の結び方
私がいつもやっている額縁の紐の結び方を
動画にしたので、
是非チェックしてみてください。
この結び方は簡単で、緩みにくく、
結び目の位置も調整できるので
おすすめです。
額縁の紐の結び目は額の中心に
来てしまうと、
鋲に紐がひっかからなくなったり
するので、左右どちらかに寄せましょう。
油彩額の額装のやり方
額装のやり方で最もシンプルなのが、
油彩額や日本画額の額装です。
基本的には、スポッと絵を額の中に
収めるだけなのですが、
多くの場合隙間があるせいで
額縁の中で、絵がガタガタ動いて
傷ついてしまいます。
そこで、詰め物をして絵をしっかりと、
固定し額の中で動かないようにしましょう。
デッサン額の額装のやり方
額装のやり方で、分かりづらいポイント
の一つが、マットの選び方かと思います。
デッサン額の場合、マットを用意して、
絵よりも一回り小さいサイズの
覗き窓を空ける必要があります。
こちらも寸法を伝えれば、額屋さんで
やってくれますが、
さほど難しくないので、やり方を覚えて
自分でやるのも良いでしょう。
マットの切り方
マットの切り方、セットの仕方について、
わかりやすい動画があったので、
紹介しておきます。
箱額の額装のやり方
額装のやり方で、最も手間がかかるのが、
箱額(ボックスフレーム)かと思います。
最近流行していて、個人的にも
オススメな箱額なんですが
布を貼ったり、板の中心に絵を
ネジ留めするなど、
やり方を知らないと
失敗してしまうので
面倒くさい…と思う方も
いるかもしれません。
これまで私は何十回と
ボックスフレームの額装を
やってきたので、
今となってはタダの作業なんですが
初めの頃は、かなり
手間取っていました。
ここでは、私が整理した
「箱額にキレイに額装する」簡単な方法を
動画で解説していきます。
大まかに言えば
①板を取り出して布を貼る
②両面テープで板の中心に絵を仮留め
③板の裏側から絵をねじ止め
という流れです。
板の中心に絵を配置するための図や、
パネルの垂木の中心にネジを打つコツなども
解説しているので
是非動画でチェックしてみてくださいね。
額装後のメンテナンスのやり方
額装のやり方は大体
わかってきたでしょうか?
額装し終えた作品は基本的に
そのまま飾れば良いのですが、
ずっと飾っているとホコリが
ついてくるものです。
特にアクリル板で保護された
黒い額の場合はホコリが目立ちます。
そこで、静電気防止スプレーを時々
吹きかけて、メガネ拭きで
拭いてあげましょう。
また、額装し終えた作品をお客様に
お送りする時の準備方法について
まとめた動画も作ったので、
是非チェックしてみてください。
額装のやり方と絵の用意の仕方
額装のやり方について具体的な
プロセスをここまで解説してきました。
最後に画家を目指す方におすすめしたい、
額装の考え方、額の選び方を
ご紹介しておきます。
普通は
個展のために絵を描き、
額に入れたいから、額縁を選ぶ
そんな順番で、
額縁を最後に選ぶと思います。
しかし、試しに一度
飾りやすい「良い額縁」を見つけて、
その額縁に入れた時に飾りやすい絵を描く
という実験をしてみてください。
これまで、私は額装のやり方を工夫
することで、新たな作風や画面構成を
思いつく
ということが何度もありました。
自分の描きたいイメージから
出発するだけではなく
時には、絵を飾りたいお客様の目線から
出発して、構成や題材、技法を決めてみると、
新たな発見があると思います。
実際、美術史上でも「枠の法則」
という考え方があります。
これは、画面の形が自由に選べないなどの、
外的な制約があると、
それを生かしてかえって面白い作品が
生まれることがあるというものなんです。
(根付は、中心に紐を通す穴がなくては
いけない、という制約のもと、数多くの
面白いデザインが生まれています。)
みなさんも「枠の法則」を生かした
「額選び」から出発する制作を
是非実践してみてくださいね。