こんにちは!画家の黒沼です!
「売り絵なんか描いてもしょうがない…」
「純粋に芸術としてやっているだけだから…」
職業画家として活動していると、
こんな感じの
やっかんだコメントを
もらうことがあります。
皆さんの中にも、真剣に絵を売るため
努力している方なら、1度や2度、
そんなことを言われたことが
あるかもしれません。
しかし、そんなことを言ってくるのは、
ほとんど絵を売ったことのない人
ばかりなんです。
なので気にしなくて良いんですよ。
上手くいっていない人のアドバイスを
きいても仕方がないと思うので、
今回はこれまで結構絵を売ってきた
(100枚ほど)私の意見を
話してみようと思います。
是非最後までお付き合い
頂ければと思います。
目次
売れる絵を描いてはいけないのか
「私の住む地域では、売り絵とか、
パン画家とか言って下に見る傾向が
あると感じます。」
「以前展示した時には、花の絵は
売り絵だから展示させて
もらえませんでした。」
「私は絵を売りたいです。そうしないと
次の絵を描く画材が買えないからです。
作家活動が出来ないからです。」
「売れる絵を売っては
いけないのでしょうか?」
これはメルマガ読者の方から
寄せられた質問なのですが、
このように地域によってはいまだに、
画商や先生方が「良い絵の定義」を
決めているようです。
そして、それだけではなく
このように自由に発表することを
邪魔することすらあるようです。
本当に信じられませんね。
公募展、団体展の人は売り絵が嫌いらしい
他にもこんな声を頂きました。
「私の通う絵画教室では、公募に
出すための100号の抽象画を描いている
ベテランの方が多いです。
これはこれで、迫力があってすごいと
思うのですが、
私はもっと飾りやすい小さい作品で
具象の絵を描きたいと思っています。
自分の描いた絵を気に入った方に
買ってもらい、飾ってもらいたいと
思っています。
しかし、私のいる場所では
「そんな売り絵の具象画なんて邪道だ。」
と言われてしまい居心地が悪いです。
私は100号の抽象画で個人的な思いを
込めて表現する
なんてことにあまり興味がありません。
売り絵を描くことは
せこいことなんでしょうか?」
このように、上の世代の影響力の強い
コミュニティにいる方は具象を描いて
売るという考えを認めてもらえず
苦しんでいるようです。
これらの元凶ははっきり言って、
巨大な抽象画が飛ぶように売れた
景気の良い時代の思い出を捨てきれない
オジサンのノスタルジーです。
その時代の絵の売れ行きについて
ベテランの画商さんに昔話として
聞きましたが、
本当にマネジメント抜きで
絵がバンバン売れていたようです。
ジャパンアズNo.1の時代に
青春を謳歌した方々が
「俺たちの言うことを聞いて、
昔の俺たちと同じ方法で幸せになれ。」
と言っているのです。
自分が知っている方法で、
自分の周りの人間が幸せになると、
俺様のおかげで皆幸せになった
と思えるので気分が良いわけです。
もっとリアルな理由としては、
自分たちと違う思想の人間
(反乱分子)が増えると、
団体に会費を納めてくれる人が
次々に流出するということへの危惧
があるでしょう。
そんなわけで、そんな方の
ノスタルジーに付き合いたい人だけが、
その場所に残ればよいと思います。
この時代ネット上にさまざまなコミュニティ
があり、居場所などいくらでもあります。
村八分を食らっても痛くもかゆくも
ありません。
自分が好きな村にいればよいのです。
なければ作ることだってできます。
そして、今いる村に違和感のある人が
流出することで、人気のない村は
なくなります。
それが健全な淘汰であり、不幸な
人を減らすための健全な方法なのです。
なぜか怒っていたおじさんの話
私も実際に展示をしていて
面と向かってやっかんだことを
いわれたことがあります。
「君らはどこの団体の所属なんだ!
君たちはこんな絵を描いていてどうするんだ!
こんなの描いてても売れないだろう!」
そんなことをすごい剣幕で
いわれたことがあります。
初対面です。
奥さんと喧嘩でもしたんでしょうか
私と同年代の息子に無視でもされたの
でしょうか?
なぜかそのオジサンは最初から
怒っていました。
こんな方に出会うと、傷ついて
黙ってしまう女性作家もいます。
アーティストは繊細なので、
そういうやっかみは勘弁してあげましょう。
それに、その時会場にいた
他のお客様も逃げましたしね。
多分会場の方からするとかなり
迷惑だと思います。
私は傷ついたのか?
いえいえ、全く
こんな感じでブログの文字数を
だいぶ稼げるネタが調達できました。
でも歓迎はしないので
勘弁してくださいね。
売り絵と売れる絵の違い
【売り絵】という言葉を口にする人の
多くは、売り物にもならないレベルの
作品しか作れない人がほとんどです。
また、画商さんなどの場合、売る力が
ない方がほとんどです。
なので、彼らの言うことは
スルーしましょう。
失敗している人の言うことを
素直に信じて行動すると、
あなたも失敗してしまいます。
【売り絵】と【あなたにとっての売れる絵】
この2つは似ているようで違います。
売り絵は飾りやすく、上手い絵だが、
どこかでみたことあるうような
作家性を感じない絵です。
伝統的で無難なモチーフ、技法、タッチ、
構図の【少しも作家の独自性】のない
絵です。
このような絵しか描けない方は
記憶に残らないので、作家として
長生きするのは難しいでしょう。
プロの画家になりたいのであれば
「売れる絵」を描きましょう。
と言うと、花鳥風月や美人画といった
よく見かけるモチーフを無難な構図で
誰より上手く描けば良い。
ととらえる方がいます。
これは売れる絵というよりは
売り絵です。
勿論、花鳥風月を描くべき
ではないとは思いません。
その人にしか描けない
花鳥風月を描けば良いのです。
私の言う売れる絵というのは、
モチーフが何であろうと、
作家性のにじみ出た絵で、尚且つ
「飾りたい。」「所有したい。」
と思わせる絵です。
と言うと絵の技術は
高くなくても良いのか
ととらえる方がいます。
これも売れる絵を目指す上では
間違いだと思います。
売れる絵は一目見て「○○さんの絵だ。」
とわかる作家性があり、
尚且つ一度目に留まると、
鑑賞者の目を釘付けにして、
絵の前からしばらく離れられなく
なってしまう そんな作品です。
そんな作品こそが、作家性と
高い技術が共存した売れる絵なのです。
きっと画家を目指す皆さんも1度や2度は
自分の描いた渾身の作品で、見る人の目を
釘付けにした、
しばらくその絵の前でみる人が足を止めた
そんな名作を描いたことがあると思います。
それこそが
「あなたにとっての売れる絵」であり
そんな作品を狙い撃ちで安定して
描けるのが売れっ子作家なのだと思います。
そんな作品を描けるようになったら、
21世紀の日本を生きるあなたが
そのスタイルで描くに至った理由
について内省的に考えてみましょう。
それを語れるようになったら、
売れっ子の芸術家になれると
私は思います。
あなたにとっての売れる絵を探そう
逆に【あなたにとっての売れる絵】
が見つかれば、作品を一目みたら
「誰誰さんの絵だ!」と多くの人が
気づき、記憶に残るのです。
そういった作品は、市場の要請を
考慮しつつも強い作家性を
持っています。
そんな、あなたにとっての売れる絵は
特別な才能がなくても、展覧会経験を積み、
お客様や画商さんと現場で交流していけば、
自然に見つかるものなんです。
顧客教育としての売り絵
「好きなだけ食べて運動も
せず、痩せられます!」
そんなサプリメントがあったとします。
科学的なデータによる裏付けもあり、
ダイエット成功者の声も多く
集まっている様子で
詐欺ではなさそうです。
そんな印象の商品を作れたら
きっと売れること間違いなしですよね。
このように顧客というのは
どうしたって、楽して結果を出したい
と思ってしまいます。
少し言い方を変えると、
「受け入れやすいもの」で
尚且つ「理想の生活が手に入るもの」
にはお金を払うといえます。
ダイエットサプリメントの場合は
食事制限も運動もなしが受け入れやすさ
で,痩せるが手に入る理想の生活です。
実際にこのサプリメントを飲んだ
お客様の中には体重が減った
という変化に喜び、さらに良い
状態を目指し以前よりも
食事制限や運動に興味をもつ方も
出てくるでしょう。
サプリメントを飲む前のズボラな
状態から一歩成長できたわけです。
この図式を絵の販売に
当てはめるとどうでしょう。
現代の日本人で絵を飾るのに
興味がある方にとって
花鳥風月が描かれた具象画が
受け入れやすい要素といえるでしょう。
手に入る理想の生活は
実際に絵を飾ってみて
感じる様々な感情です。
「来客の際に絵がきっかけで
会話が弾んで楽しい。」
「今まで住んでいた家が少し
華やかな場所に感じられる
ようになった。」
などなど
そしてこうした体験を
何度もしたお客様は
「具象画はそろそろ飽きたから、
次は抽象画も飾ってみようかな。」
と思うかもしれません。
受け入れやすい物を買って
生活の変化を実感した結果、
より洗練されたものを
求めるように一歩進んだわけです。
このような「顧客教育」または
「啓蒙」が歴史を通して進んだのが
ヨーロッパでした。
教育とか、啓蒙とかいうと
上から目線で嫌な印象を持つかも
しれませんが
専門的な訓練を積んだ
アーティストが提供した
文化的な体験(作品鑑賞)
をお客様がお金を払って
買うことで、生活が豊かに
なる
という一連のフェアな商取引
を文化的な言葉遣いで説明
すると、啓蒙とか教育
とかになるわけです。
これを通して世界は
豊かになるのです。
決して暴利をむさぼるための
活動ではないのです。
日本の場合は具象→抽象という
流れで進むとは限りません。
花鳥風月→身の回りのモチーフ
といった感じかもしれません。
実際に、江戸時代つまり
本格的なヨーロッパ式の
近代化が始まる前の時代には
庶民の間でも絵を飾って
楽しむ習慣がありました。
多色刷りの浮世絵版画
などがその代表ですが
絵画=庶民には無縁の贅沢品
といった感じではなく
一般の人々も参加していた
アート市場があったわけです。
一度、断絶したその営みの
続きをやれば良いのです。
今の日本で良く売れる絵が
花鳥風月+美人画というのは
一般の人々も参加していた
アート市場の価値観が
江戸末期の頃からそんなに
変わっていないことの
証拠のように思えます。
花鳥風月の絵は売れます。
それを見て「売り絵」と
揶揄する人もいます。
しかし確実に「売り絵」が
売れることによってですら、
お客様の目は肥えていくのです。
このように、鑑賞者を一歩だけ
前に進めるような啓蒙的な作品こそが
本当の意味で日本における
同時代的な作品なんだと思います。
現代アートの人たちも売り絵が嫌いらしい
一部の美術批評家のハイコンテクストな
マニアックなカルチャーの中でのみ
評価される作品は「進みすぎた」
作品であり、
これはこれで現代的ではないと
私は思います。
といった本音を70歳くらいの
先生方にまじめに話すと
「それがポピュリズムだ。」
という反論を受けます。
一理あるとは思いますが、
私の個人的な意見としては、
美術館の学芸員や一部の批評家
といった知的エリートが
「美しさの基準」であった時代は
もう終わったと思います。
エリートによる影響力の集中管理は
冷戦崩壊とともに、
イデオロギーの時代の終わりと
共に終わった。
という話をきいたことがあります。
私はこの意見の方が説得力を感じます。
その証拠に数年前、MOMAが
ビヨークの展覧会をやって
大反響でしたね。
モダニズムの牙城であるMOMAですら、
顧客の感情をくみ取る
そんな時代が現代なんだと思います。
まとめ
売り絵もとい売れる絵の持っている
意義や、反対勢力の意見について
まとめてみました。
絵を売ることは本当に素晴らしい
ことなんです。
自分で0から生みだした物が
それを求める人の元に届き
飾って楽しんでもらえる。
そしてそんな人が増えることで
結果的に日本人全体の
美術鑑賞眼が磨かれていく。
絵を描いた人も、絵を買ってくれた
方も、そして社会にとってもプラス
になる
3方良しの活動なのです。
不幸にもそんな実感をもてなかった
人は絵を売ることに対して
違和感や抵抗感があるのでしょう。
それで噛みついてくることもあるでしょう。
しかし気にすることはありません。
みなさんも是非【あなたにとっての売れる絵】
を見つけるために日々精進していきましょうね!
私も自分にとっての売れる絵を
さらにレベルアップさせるべく奮闘中です。
それではまた~