どうも黒沼です。
美大では月1くらいで描いた作品を
プレゼンして、教授に批評してもらう
講評会というイベントがあるんですよ。
![](https://i0.wp.com/kurohaku.com/wp-content/uploads/2018/01/1516180403263-300x232.jpg?resize=728%2C563)
昨日ようやく、卒業制作の講評が終わり
今日、プロのカメラマンに撮影して頂き
ました。
![](https://i0.wp.com/kurohaku.com/wp-content/uploads/2018/01/DSC_0812-300x169.jpg?resize=728%2C410)
2月には六本木の国立新美術館で展示しますの
で、興味のある方は是非見に来てくださいね。
主要五美大の美大生の集大成が勢ぞろいする
展覧会はエネルギッシュで元気がもらえますよ。
さて、最近は続けて
西洋美術史シリーズを書いています。
美大に通う私が美術史の授業、教授の話
本で手に入れた美術史情報をアップして
いくので、チェックしてみてくださいね。
今回は抽象表現主義について解説します。
当時の音楽とともにお楽しみください。
目次
アメリカ抽象表現主義の画家の絵画の特徴
![](https://i0.wp.com/kurohaku.com/wp-content/uploads/2018/01/pollock1-300x183.jpg?resize=728%2C444)
抽象表現主義とは1940年代~50年代に
アメリカのニューヨークを中心に起きた
芸術運動です。
抽象表現主義という言葉は1945年の
「ザ・ニューヨーカー」誌で初めて登場し、
50年頃定着したようです。
戦後の混沌とした空気の中、ユングの理論
(人間の無意識は互いにつながっている)や
シュルレアリスムの方法論を生かし
抽象表現主義は展開しました。
同時期のヨーロッパでの芸術運動
アンフォルメルでは、ユングの原型論を感じ
させる原始・古代のような図像が描かれます。
![](https://i0.wp.com/kurohaku.com/wp-content/uploads/2018/01/20140628_JeanFautrier-2-244x300.jpg?resize=600%2C738)
批評家ハロルド・ローゼンバーグによる命名
のアクションペインティングでは、あらゆる
理性的拘束からの解放を目指し本能的で動的
なタッチの作品が多く描かれました。
抽象表現主義誕生の背景
2度にわたる大戦で戦火に見舞われなかった
アメリカには多くの芸術家や知識人が
ヨーロッパから亡命し、移住していました。
このため、芸術の中心地はパリから
ニューヨークへ移ります。
そんな当時のニューヨークで起こったのが
抽象表現主義でした。
当時のアメリカは保守的で抑圧的な社会でした。
そんな中、抽象表現主義のような感情的な表現
が登場したんですね。
批評家のクレメント・グリンバーグの活躍で
ジャクソン・ポロックをはじめ多くの芸術家
がデビューしました。
![](https://i0.wp.com/kurohaku.com/wp-content/uploads/2018/01/fd60ebb70697af44783cd44c4d3c40a6-300x226.jpg?resize=728%2C548)
巨大なキャンバスに巨大な色面を描く、
カラーフィールドペインティングや
![](https://i0.wp.com/kurohaku.com/wp-content/uploads/2018/01/ダウンロード-8.jpg?resize=600%2C777)
表現主義の流れをくむ荒々しいタッチの
アクションペインティングなどアメリカ発の
美術様式が多く生み出されます。
![](https://i0.wp.com/kurohaku.com/wp-content/uploads/2018/01/B9DC104F-6497-45D6-9BF0-AF3BC0CF8FAD-227x300.jpeg?resize=598%2C790)
当時ヨーロッパでもアクションペインティング
のヨーロッパ版ともいえるアンフォルメルが
登場します。
アンフォルメルは第二次世界大戦後のフランス
で起こります。(↓はフォートリエの作品です。)
![](https://i0.wp.com/kurohaku.com/wp-content/uploads/2018/01/7618374760_a6ecb91e73_z-300x184.jpg?resize=728%2C446)
![](https://i0.wp.com/kurohaku.com/wp-content/uploads/2018/01/20140628_JeanFautrier-2-244x300.jpg?resize=728%2C895)
アンフォルメルでは伝統的なフォルム(形態)
という価値観からの脱却を目指し
素材(マチエール)を通し精神性を表現します。
この頃のアメリカの絵画は多くの作品が
オールオーバーと呼ばれる、画面に主従関係
や中心のない斬新な構成で人気を呼びました。
![](https://i0.wp.com/kurohaku.com/wp-content/uploads/2018/01/pollock1-300x183.jpg?resize=728%2C444)
戦争で傷ついた人々の心を主張しない
瞑想へ誘うようなイメージで癒したんですね。
しかし、ロスコやニューマンのように
ミニマルで表現内容に乏しい作品が増えた
結果、次第に表現が硬直化、単調化し
衰退していきました。
![](https://i0.wp.com/kurohaku.com/wp-content/uploads/2018/01/11a7843a1870494e99887bbd027fd847-260x300.jpg?resize=600%2C692)
オートマティスムを独自に展開
抽象表現主義ではシュルレアリスムで使われた
オートマティスムの技法、考えが
生かされています。
オートマティスムとは酩酊状態や超高速状態で
文字や絵を描くことで、無意識や偶然の表情、
言葉を紡ぎだす技法でした。
シュルレアリスムも戦争からくる絶望への反応
として、無意識の世界への期待が生まれました。
アメリカの抽象表現主義でも、戦後の荒んだ
人々の救済を無意識や偶然性の力に
期待したんですね。
また、戦中多くのシュールレアリスト
がアメリカへ亡命しました。
彼らはニューヨーク派(抽象表現主義は当初
こう呼ばれました。)のハンス・ホフマンが
設立した美術学校で教鞭をとっていました。
若き日のジャクソン・ポロックは彼らに大きな
影響を受けたようです。
シュルレアリスムというと、ダリをイメージ
される方も多いでしょう。
![](https://i0.wp.com/kurohaku.com/wp-content/uploads/2018/01/1424859851-300x225.jpg?resize=728%2C546)
![](https://i0.wp.com/kurohaku.com/wp-content/uploads/2018/01/fd60ebb70697af44783cd44c4d3c40a6-300x226.jpg?resize=728%2C548)
ダリの絵画とポロックの絵画は全く
似ていないので、抽象表現主義が
シュルレアリスムに影響を受けたというのは
ピンとこないかもしれません。
しかし、シュルレアリスムにはダリを始め
とするデペインズマン系と
エルンストを始めとするオートマティスム系
がいました。
デペインズマン系は、スケールの変更
やありえない、物同士の組み合わせで
無意識の世界を表現しました。
![](https://i0.wp.com/kurohaku.com/wp-content/uploads/2018/01/the-listening-room-1952-300x248.jpg?resize=728%2C602)
オートマティスム系は、フロッタージュや
デカルコマニーといった、絵の具の偶然の
表情を生かし、絵画を組み立てることで、
無意識のイメージを表現しました。
![](https://i0.wp.com/kurohaku.com/wp-content/uploads/2018/01/1432611570-300x244.jpg?resize=728%2C592)
抽象表現主義は後者のオートマティスム系に
大きな影響を受けたんですね。
アメリカ抽象表現主義の有名な画家
ジャクソン・ポロック
![](https://i0.wp.com/kurohaku.com/wp-content/uploads/2018/01/pollock1-300x183.jpg?resize=728%2C444)
![](https://i0.wp.com/kurohaku.com/wp-content/uploads/2018/01/fd60ebb70697af44783cd44c4d3c40a6-300x226.jpg?resize=728%2C549)
ジャクソン・ポロックは抽象表現主義の
代表的な画家に1人です。
アクションペインティングという斬新な手法
で一躍有名になりました。
![](https://i0.wp.com/kurohaku.com/wp-content/uploads/2018/01/50301001092-291x300.jpg?resize=600%2C619)
ポロックはキャンバスを床に寝かせ、
絵の具を滴らせたり、弾き飛ばしたりして
描きました。
シュルレアリスム的な偶然性を生かした表現
ですね。
ポロックはそれまでにないオールオーバー
という価値観を提示しました。
オールオーバーとは、画面の中に主従関係
がない、中心のない絵画のことです。
それまでは、面積対比や密度のメリハリで、
動きや空間を表現するのが一般的でした。
ポロックは画面のどの部分も同じような
ハリのある絵画を描いたんですね。
ポロックは自身の絵画のこの特徴を
「それらは始まりもなければ終わりもない絵だ」
と語っています。
ウィレム・デ・クーニング
![](https://i0.wp.com/kurohaku.com/wp-content/uploads/2018/01/B9DC104F-6497-45D6-9BF0-AF3BC0CF8FAD-227x300.jpeg?resize=600%2C793)
![](https://i0.wp.com/kurohaku.com/wp-content/uploads/2018/01/image-3-247x300.jpg?resize=603%2C732)
![](https://i0.wp.com/kurohaku.com/wp-content/uploads/2018/01/005B0A1D-C2C3-4768-BAD5-148971EEF4AA-246x300.jpeg?resize=602%2C734)
デ・クーニングはアクションペインティング
の代表的な画家の一人です。
デ・クーニングは構成を入念に練ってから
描くような従来の画面構成をしませんでした。
筆の勢いに任せ、偶然の絵の具の表情やタッチ
を生かして描きました。
デ・クーニングは完全な抽象表現ではなく、
モチーフを感じ取れるように描きました。
「抽象絵画であっても、その形に類似性を
持たせないといけない。」
と彼は語っています。
マーク・ロスコ
![](https://i0.wp.com/kurohaku.com/wp-content/uploads/2018/01/ダウンロード-8.jpg?resize=600%2C777)
![](https://i0.wp.com/kurohaku.com/wp-content/uploads/2018/01/11a7843a1870494e99887bbd027fd847-260x300.jpg?resize=598%2C690)
![](https://i0.wp.com/kurohaku.com/wp-content/uploads/2018/01/mark-rothko-sketch-for-039mural-no.-4039-300x210.jpg?resize=600%2C420)
ロスコは広大な単色の四角い色面で
描くスタイルで一躍有名になりました。
ロスコはシュルレアリスムから多分に
影響を受けました。
「はかなさと偶然性」、「機知と遊び心」、
「皮肉」、「緊張」、「官能性」、「死」
という7つの要素を挙げ、悲劇をテーマに
描きました。
まとめ
今回は抽象表現主義を紹介しました。
抽象表現主義の特徴はまとめると
・広大な色面のカラーフィールド ペインティングはミニマルアートの 先駆けとなった。
・オールオーバーという画面内に 主従関係のない構成を生み出した。
といった感じですね。
次回はにネオダダついて
紹介します。
それではまた。
↓西洋美術史についてはコチラ↓
![](https://i0.wp.com/kurohaku.com/wp-content/uploads/2018/06/画家と美術史-300x176.jpg?resize=725%2C422)