どうも黒沼です。
美大では月1くらいで描いた作品を
プレゼンして、教授に批評してもらう
講評会というイベントがあるんですよ。
昨日ようやく、卒業制作の講評が終わり
今日、プロのカメラマンに撮影して頂き
ました。
2月には六本木の国立新美術館で展示しますの
で、興味のある方は是非見に来てくださいね。
主要五美大の美大生の集大成が勢ぞろいする
展覧会はエネルギッシュで元気がもらえますよ。
さて、最近は続けて
西洋美術史シリーズを書いています。
美大に通う私が美術史の授業、教授の話
本で手に入れた美術史情報をアップして
いくので、チェックしてみてくださいね。
今回は抽象表現主義について解説します。
当時の音楽とともにお楽しみください。
目次
アメリカ抽象表現主義の画家の絵画の特徴
抽象表現主義とは1940年代~50年代に
アメリカのニューヨークを中心に起きた
芸術運動です。
抽象表現主義という言葉は1945年の
「ザ・ニューヨーカー」誌で初めて登場し、
50年頃定着したようです。
戦後の混沌とした空気の中、ユングの理論
(人間の無意識は互いにつながっている)や
シュルレアリスムの方法論を生かし
抽象表現主義は展開しました。
同時期のヨーロッパでの芸術運動
アンフォルメルでは、ユングの原型論を感じ
させる原始・古代のような図像が描かれます。
批評家ハロルド・ローゼンバーグによる命名
のアクションペインティングでは、あらゆる
理性的拘束からの解放を目指し本能的で動的
なタッチの作品が多く描かれました。
抽象表現主義誕生の背景
2度にわたる大戦で戦火に見舞われなかった
アメリカには多くの芸術家や知識人が
ヨーロッパから亡命し、移住していました。
このため、芸術の中心地はパリから
ニューヨークへ移ります。
そんな当時のニューヨークで起こったのが
抽象表現主義でした。
当時のアメリカは保守的で抑圧的な社会でした。
そんな中、抽象表現主義のような感情的な表現
が登場したんですね。
批評家のクレメント・グリンバーグの活躍で
ジャクソン・ポロックをはじめ多くの芸術家
がデビューしました。
巨大なキャンバスに巨大な色面を描く、
カラーフィールドペインティングや
表現主義の流れをくむ荒々しいタッチの
アクションペインティングなどアメリカ発の
美術様式が多く生み出されます。
当時ヨーロッパでもアクションペインティング
のヨーロッパ版ともいえるアンフォルメルが
登場します。
アンフォルメルは第二次世界大戦後のフランス
で起こります。(↓はフォートリエの作品です。)
アンフォルメルでは伝統的なフォルム(形態)
という価値観からの脱却を目指し
素材(マチエール)を通し精神性を表現します。
この頃のアメリカの絵画は多くの作品が
オールオーバーと呼ばれる、画面に主従関係
や中心のない斬新な構成で人気を呼びました。
戦争で傷ついた人々の心を主張しない
瞑想へ誘うようなイメージで癒したんですね。
しかし、ロスコやニューマンのように
ミニマルで表現内容に乏しい作品が増えた
結果、次第に表現が硬直化、単調化し
衰退していきました。
オートマティスムを独自に展開
抽象表現主義ではシュルレアリスムで使われた
オートマティスムの技法、考えが
生かされています。
オートマティスムとは酩酊状態や超高速状態で
文字や絵を描くことで、無意識や偶然の表情、
言葉を紡ぎだす技法でした。
シュルレアリスムも戦争からくる絶望への反応
として、無意識の世界への期待が生まれました。
アメリカの抽象表現主義でも、戦後の荒んだ
人々の救済を無意識や偶然性の力に
期待したんですね。
また、戦中多くのシュールレアリスト
がアメリカへ亡命しました。
彼らはニューヨーク派(抽象表現主義は当初
こう呼ばれました。)のハンス・ホフマンが
設立した美術学校で教鞭をとっていました。
若き日のジャクソン・ポロックは彼らに大きな
影響を受けたようです。
シュルレアリスムというと、ダリをイメージ
される方も多いでしょう。
ダリの絵画とポロックの絵画は全く
似ていないので、抽象表現主義が
シュルレアリスムに影響を受けたというのは
ピンとこないかもしれません。
しかし、シュルレアリスムにはダリを始め
とするデペインズマン系と
エルンストを始めとするオートマティスム系
がいました。
デペインズマン系は、スケールの変更
やありえない、物同士の組み合わせで
無意識の世界を表現しました。
オートマティスム系は、フロッタージュや
デカルコマニーといった、絵の具の偶然の
表情を生かし、絵画を組み立てることで、
無意識のイメージを表現しました。
抽象表現主義は後者のオートマティスム系に
大きな影響を受けたんですね。
アメリカ抽象表現主義の有名な画家
ジャクソン・ポロック
ジャクソン・ポロックは抽象表現主義の
代表的な画家に1人です。
アクションペインティングという斬新な手法
で一躍有名になりました。
ポロックはキャンバスを床に寝かせ、
絵の具を滴らせたり、弾き飛ばしたりして
描きました。
シュルレアリスム的な偶然性を生かした表現
ですね。
ポロックはそれまでにないオールオーバー
という価値観を提示しました。
オールオーバーとは、画面の中に主従関係
がない、中心のない絵画のことです。
それまでは、面積対比や密度のメリハリで、
動きや空間を表現するのが一般的でした。
ポロックは画面のどの部分も同じような
ハリのある絵画を描いたんですね。
ポロックは自身の絵画のこの特徴を
「それらは始まりもなければ終わりもない絵だ」
と語っています。
ウィレム・デ・クーニング
デ・クーニングはアクションペインティング
の代表的な画家の一人です。
デ・クーニングは構成を入念に練ってから
描くような従来の画面構成をしませんでした。
筆の勢いに任せ、偶然の絵の具の表情やタッチ
を生かして描きました。
デ・クーニングは完全な抽象表現ではなく、
モチーフを感じ取れるように描きました。
「抽象絵画であっても、その形に類似性を
持たせないといけない。」
と彼は語っています。
マーク・ロスコ
ロスコは広大な単色の四角い色面で
描くスタイルで一躍有名になりました。
ロスコはシュルレアリスムから多分に
影響を受けました。
「はかなさと偶然性」、「機知と遊び心」、
「皮肉」、「緊張」、「官能性」、「死」
という7つの要素を挙げ、悲劇をテーマに
描きました。
まとめ
今回は抽象表現主義を紹介しました。
抽象表現主義の特徴はまとめると
・広大な色面のカラーフィールド ペインティングはミニマルアートの 先駆けとなった。
・オールオーバーという画面内に 主従関係のない構成を生み出した。
といった感じですね。
次回はにネオダダついて
紹介します。
それではまた。
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