どうも 絵画をたしなむ
を運営する画家の黒沼です。
これまで、記事を書いてきて
画家の名前を引用して説明したり
することが結構あり、
話が専門的になりすぎると
いうことが気になっていたので、
これから西洋美術史についての
記事を易しく書いていこうと思います。
初心者でも、玄人でも楽しめる記事を
目指して頑張って書いていきたいと思います!
今回は中世のロマネスク美術
について解説します!
当時の音楽とともにお楽しみください!
目次
中世ロマネスク美術とは
ロマネスク美術とは、
960年頃~1270年頃
ドイツ、フランス、スペインに
いたる地域で流行した美術様式です。
(イタリアやトルコ、ギリシャ地域では、
ビザンティン美術がロマネスク期にも
続いたようです。)
ロマネスク期の美術は黙示録をテーマ
としたものが多かったようです。
ちょうどこの頃、キリストの死後1000年
が近づいていました。
「ヨハネの黙示録」にはキリストの
死後1000年には、
戦争、疫病、災害、怪物などに襲われ、
世界が滅ぶ
という予言があり、世界の終わりの時、
「最後の審判」が行われ、悪人は地獄へ、
信仰の篤い善人は天国へ送られる
と書かれていました。このため、
紀元後1000年前後のロマネスク期には、
黙示録がよく美術のモチーフになったんですね。
また、多くの人が最後の審判の日に備え、
善行を積むべく、聖地巡礼が流行しました。
一生に一度はお伊勢参りに行きたい
と思った江戸時代の人々と似ていますね。
巡礼地の多くは聖遺物(聖人の持ち物や遺骨)
のある修道院や聖人の墓地でした。
聖遺物を持つ修道院はこのような、
豪華な聖遺物箱に収められ、
巡礼者を迎えていました。
聖遺物のない修道院は巡礼者が
来ないため、聖遺物箱が
盗まれることもあったようです。
ちなみに、聖遺物のひとつで、
都市伝説としても有名な聖骸布は
最新の科学的な調査によれば、
ロマネスク末期~ゴシック期に
「作られた」ようです。
修道院も集客に苦労していたんですね…
巡礼地の中でも特に人気のあったのが、
十二使徒大ヤコブの遺骨の納められた、
スペインの
サンチャゴ・デ・コンポステラ
であったようです。
中世ロマネスク期の建築様式、有名な教会建築
ロマネスク期の建築は
素朴で禁欲的です。
ヨーロッパの教会と言えば、
ステンドグラスのある
豪華な建築をイメージするかたも
多いかもしれませんが、
これは、ゴシック期の教会の
特徴なんですね。
ロマネスク期の建築はとにかく、
禁欲的で、まさに僧侶の
修行空間といったかんじです。
最近流行りのミニマリストの部屋
と似たような、禁欲的な雰囲気がしますね。
私の最も好きな教会建築は
実はフランスのロマネスク期の
ル・トロネ修道院なんです。
このように、重厚な厚い石造りの壁に
小さな窓があり、神秘的な一筋の光
が差し込んできます。
当時のガラスは今ほど透明では
ありませんでしょうから、
薄明かりの中での瞑想的な空間
だったんですね。
ピサの斜塔もロマネスク建築
ガリレオガリレイも落体の法則の
実験に活用したピサの斜塔
は傾いています。
傾いていなかったら今ほど
有名ではなかったかもしれませんね。
傾いてしまった原因は地盤が
柔らかかったことによるようです。
度重なる工事のおかげでなんとか
今の角度を保てているようです。
ピサの斜塔はとにかく大きい
イメージがあったので、ゴシック建築だと
勘違いしていたのですが、ロマネスク建築のようです。
【中世の建築様式】ロマネスク建築とゴシック建築の違い
中世の有名な建築様式といえば
ロマネスク建築とゴシック建築ですが
両社の違いは下記のような感じです。
ロマネスク建築
・禁欲的
・壁が分厚い
・田舎に多い
・丸い石造アーチ
ゴシック建築
・豪華絢爛(ステンドグラスなど)
・壁が薄い(新工法フライングバットレスのおかげ)
・都市に多い
・先のとがったアーチ
1発で違いを見分けるには
アーチ部分に注目しましょう。
↓ロマネスク建築の丸いアーチ
↓ゴシック建築のとがったアーチ
中世ロマネスク期の有名な彫刻作品
ロマネスク期には、従来の木造にかわり、
重厚な石造の修道院が数多く建てられます。
ロマネスクとは「ローマ風の」
という意味があるのですが、
ロマネスク期の建築にはローマ風の
アーチ構造が多く用いられました。
ロマネスク期の建築には、
数多くの奇怪な石像が施されています。
これらの石像は枠の法則にのっとり、
柱や扉口の形に沿うような、
押し込められた形をしています。
これらの石像にはキリスト教とは
関係のない、現地の神話に
登場する怪獣などもいます。
これは、ヨーロッパ中から
聖地巡礼で訪れた観光客を
喜ばせるためのサービス
だったようです。
きっと、アニメの舞台を巡る
旅行と同じく
聖書の舞台を巡る旅も
楽しい旅行だったのでしょう。
中世ロマネスク期の有名な絵画作品、技法
ロマネスク期の建築には
多くのフレスコ画が施されています。
ビザンティン美術の時代にはモザイク壁画
が多かったのに対し、
ロマネスク期の建築には
フレスコ画が多く描かれています。
フレスコ画とは、壁に塗った
モルタルが乾かないうちに
水に溶いた顔料で描く技法です。
絵の具の定義のページで書いた通り、
本来は水に溶いた顔料だけでは
壁に絵の具は定着しません。
(媒材という糊成分が必要です)
しかし、フレスコ技法は壁の乾燥
とともに絵の具が定着するので、
媒材はいらないんですね。
ただ、この技法は描き直しが聞かず、
素早く描く必要があるので、
職人芸が試される技法なんですね。
キャンバスが四角い理由
皆さんは
「なぜキャンバスは四角いのか」
と考えたことがありますか?
実はこれは絵画は歴史的に、
もともと建築の一部であったから
なんですね。
ポンペイの記事でも書いたように、
絵画はもともと、建築の壁と一体でした。
ポンペイの場合は部屋を
より広く見せるために
今回のような修道院の場合は
文字の読めない巡礼者に
聖書の物語を伝えるために
絵画は描かれました。
絵画は建築の一部であった
とはこういうことなんですね。
まとめ
今回はロマネスク期の美術について
紹介しました。
神秘的で素朴な教会、それとは
対照的な奇怪で愉快なモンスターは
見ていて本当に飽きませんね。
ロマネスク期の特徴をまとめると
・枠の法則に則った奇怪な柱頭彫刻
・建築の一部としての絵画
という感じですね。
次回は中世のゴシック期の美術
について紹介します。
それではまた。
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