目次
鉛筆デッサンの道具
・鉛筆とは
鉛筆といえば文房具としてお馴染みか
と思います。
殆どの方は鉛筆と言えばHB
と思っているかと思います。
しかし、デッサン用の鉛筆には
10H~10Bまでの濃さの
バリエーションがあるんです。
鉛筆の濃さは芯が柔らかいほど濃く
硬いほど薄いです。
10Bが最も濃く
9,8,7Bと数字が減るごとに
薄くなっていきます。
そして、2B、B、HB、F、H、2H、3H
という順にさらに薄くなっていきます。
ちなみに
Bはblackを表し、Hはhard
Fはfirm(しっかりした)を表します。
鉛筆デッサンを専門的に習う場合
6H~6Bの鉛筆を揃えます。
おすすめのメーカーは
金の輪っかが目印のハイユニ
デザイナー必携のステッドラー
あと個人的には
ファーバーカステルも
おすすめです。
ハイユニは若干茶色っぽく
ステッドラーは若干青っぽい
発色が特徴です。
ファーバーカステルは
「鉛っぽい」確かな描き味が
特徴で、私のお気に入りです。
(タッチを入れて質感表現する
のに向いていると思います。)
・鉛筆デッサンのおおまかな流れ
・描き始めは2Bあたりを使おう
鉛筆デッサンは画用紙に
描くことが多いです。
画用紙は木炭紙やキャンバスと
比べ、弱いため
序盤は紙の白さ、凹凸を
残しながら、優しく進めていく
のが王道です。
そのため、やや柔らかめの
2Bや3Bで描き始めましょう。
・炭色をしっかりとのせよう
序盤のアタリの作業が終わり
形が決まってきたら
3Bから5Bあたりで、暗い部分を
どんどん暗くしていきましょう。
鉛筆デッサンは木炭デッサンに比べ
階調を広げやすい
(グレーの幅を広げやすい)表現です。
この段階では
物の形に添ったストロークで塗る
のがコツです。
鉛筆をたてて、しっかりと
画用紙の目の奥まで炭を入れ込む
つもりで
黒をのせていきましょう。
黒いモチーフを描く時など
本当に真っ黒を作りたいときには
ステッドラーの7B、8B
がおすすめです。
鉛筆の芯は粘土と黒鉛で
出来ていますが
ステッドラーの7B、8Bの鉛筆には
黒の顔料が含まれています。
なので、真っ黒に塗っても黒光りせず、
塗り込むことができます。
・6Hとかって使うの?
私は初めて、6Hを使った時
ほとんど色が出ず
「これちゃんと使えるのかな」
と思いました。
6H~の硬い鉛筆は
炭色をのせるためには
あまり使いません。
デッサン終盤で
画用紙の凸凹をつぶすために
使ったりします。
また、画用紙ではなく、ケント紙
のような滑らかな紙に描くときに
硬い鉛筆は活躍します。
・細部の質感を描く
鉛筆をしっかり塗り込み、モチーフの
ボリュームが出てきたら
今度はマイナスの作業です。
陰の中をガーゼでこすったり
光とカゲの境目あたりを
練りゴムやプラスチック消しゴム
で白抜きしていきます。
このとき、消しゴムホルダーが
あると細かく白抜きできて便利です。
消しゴムで白抜きして光の形を
鉛筆で塗って陰の形を細かく
刻んでいきながら、色味を調整し
完成に向かいます。
・練りゴム
デッサンの用の練り消しです。
普通の消しゴムで、消すと画用紙が
あっという間に傷んでしまいますが
練りゴムなら、あまり紙にダメージを
与えず白くできます。
黒くなったら折りたたんで使います。
真っ黒になったら寿命なので
買い替えましょう。
・プラスチック消しゴム
普通の消しゴムです。デッサンでは
実はあまり登場しません。
ハイライトの表現など
ピンポイントで真っ白に
したいときに使います。
このような極細の消しゴムホルダーが
あるとデッサンでは便利です。
・画用紙
ザラザラが表
(書くことはこれくらいですね)
・カッター
デッサン用の鉛筆は鉛筆削り
ではなく、カッターで削ります。
芯を長く出すことで、鉛筆を寝かせて
広い面を優しく塗るのがねらいです。↓
・ヤスリ
カッターで削った後、仕上げ用で
使います。
特に硬い鉛筆はカッターだけで
削るのは難しいので
320番くらいの紙やすりが
あると便利です。
木炭デッサンの道具
・木炭
木炭には、本当に様々な種類があります。
鉛筆同様、硬さ色味のバリエーション
は、もちろん
四角くカットされたものまで
様々です。
今回はおすすめの木炭を
数種類ご紹介します。
・柳 200番 ←必携
最もオーソドックスな木炭で
ビギナーから玄人まで
必携の木炭です。
軸が太くとても柔らかいのが
特徴です。
(鉛筆で言えば3B~5Bのイメージです)
描き出し(制作序盤)に活躍します。
柔らかいので、たっぷりと塗って
ガーゼで押さえて、好みのグレーを
作るイメージで使うと美しい色が
作れます。
・ミズキ 980番 ←必携
これもオーソドックスな木炭で
ビギナーから玄人まで
必携の木炭です。
軸が細く、固いのが特徴です。
制作中盤以降描き込みで重宝します。
(鉛筆で言えば3h~HBのイメージです
しっかり削り、尖らせた状態で
丁寧に塗っていくと
とても美しい淡い色を作れます。
・柳 高熱処理 1600番 ←できれば欲しい
200番より少し硬い木炭です。
制作中盤以降、暗い色の色幅を
増やす時に重宝します。
深いグレーが作れる木炭です。
・ウコギ角炭 800番 ←お好み
1600番より硬く
980番より柔らかい木炭です。
四角くカットされているのが特徴で
ねかせて塗ると、木炭紙のエンボスが
美しく浮き上がります。
紙のざらつきをいかした表現
に向いています。
・ホウ 970番 ←お好み
硬さ、描き味は
980番に似ていますが
少しだけ柔らかく
発色がとても美しいです。
使いこなせば淡い青っぽい発色の
美しいデッサンが描けます。
・柳 高熱処理 360番←お好み
硬さは1600と同じくらいですが
発色と付き方に特徴があります。
一旦塗ると、取れづらいため、
細かい黒のグラデーションが
作れます。
ヌルっとした感じの変わった木炭です。
発色は茶色っぽく、好き嫌いが
使う人によってはっきり分かれる
木炭です。
・ ウインザー&ニュートン 柳←お好み
200番と同じような硬さ
の木炭ですが付き方に特徴があります。
たっぷり塗って、ガーゼで押さえると
かなりきめの細かいマットな色が
作れます。
あまり、触りすぎると汚くなるので
好き嫌いの分かれる木炭です。
(私は割と好きでした)
・芯抜き
木炭は買ってきた状態だと
中心に柔らかい粉(芯)が
つまっています。
これは描く時に邪魔になるので
芯抜きという道具で、取り除きます。
煙突かきのような要領で
針金を差し込み、ブラシ部分で
粉をかきとります。
硬い木炭には芯がないので
芯抜きは必要ないです。
・チャコールペンシル
チャコールペンシルとは
木炭とコンテの間のような
しっかりした描き味の鉛筆です。
HB,2B、4B、6Bの4種類の濃さ
があり、制作中盤以降の
描き込みの時に使います。
物の接地面など、しっかり黒で
締めたいポイントで重宝します。
・練りゴム
鉛筆デッサンの時に比べ
あっという間に真っ黒になります。
基本的には
木炭を塗る→ガーゼでこすり定着→
練りゴムで明るくor木炭を重ね暗く
という流れです。
木炭は黒くつけすぎたら
消す前に指ではじいてみましょう。
パラパラと余分な炭が落ちます。
ガーゼで刷り込んだ部分に
練りゴムは使いましょう。
・食パン
練りゴムよりも
紙を傷めずに木炭を
取ることができます。
耳の部分はいらないので、食べます。
(けっこう食べながら描いてる人います笑)
・ガーゼ
木炭は鉛筆と異なり、塗っても指で
はじくと落ちてしまいます。
しっかりと影色を作りたい時
反射光を入れたいときに、
部分的にガーゼでこすると定着します。
(画面全体をこすると汚れた紙が
出来上がるので、あくまで部分的に)
・擦筆
ピンポイントで
木炭を定着させたいとき使います。
イメージとしてはガーゼの
ペンタイプですね。
画像の物は柔らかいタイプで
軸の白い硬いタイプの擦筆もあります。
サイズのバリエーションもあります。
・刷毛
ガーゼで木炭を刷り込むと
木炭紙のエンボスが凹みます。
木炭紙のざらつきを残したまま
グレーを作りたいとき
羊毛などの柔らかい毛の刷毛で
なでましょう。
・木炭紙
1枚250円もする驚きの紙です。
木炭紙大MBM が正式名称で
ザラザラが表です。
木炭やコンテなどを美しく
発色させる紙で、ガーゼでこすると
何とも言えないキレイなグレー
が作れます。
美大受験では、彫刻科、油画科で
木炭デッサンの試験が課されるので
彼らにはお馴染みの存在です。
木炭紙は500㎜×650㎜ですが
倍のサイズの倍版木炭紙なるもの
より厚みを増した特厚口木炭紙
なるものもあります。
画板です。木炭デッサンでは
木炭紙を4,5枚クリップで挟み
使います。
下の数枚はクッションがわりです。
昔の巨匠が壁画などを描く時に
用意した、原寸大の下絵カルトーネ
が名の由来だそうです。
マンガを意味するカートゥーンも
同語源らしいですよ。
その他デッサン用おすすめ画材
・芯ホルダー
イメージとしては
芯が極太のシャープペンシルです。
野外でのスケッチなど
鉛筆をカッターで削れない環境で
重宝します。
・芯削り器
芯ホルダー専用の削り器で
削りカスが収納されるので
野外でのスケッチなどで重宝します。
穴の部分に芯を入れてクルクルまわすと
キレイな円錐形の芯が保てます。
・デスケル
デッサンスケール略してデスケルです。
構図決めなど、序盤に役立ちます。
木炭紙比率、B3サイズ比率
Fキャンバス比率などなど
様々な種類が用意されています。
描き終わった後は
絵の具の定義の記事で書いたように
顔料は媒材がなければ
画面から剥がれ落ちてしまいます。
デッサンの道具は鉛筆にしろ
木炭にしろ棒状に固めた粉です。
デッサンとは、これを紙に
なすりつけているだけなので、
時間がたつと粉が落ちてきます。
そこで、デッサンの場合は
媒材を後からまとめて
画面にはりつけます。
その媒材こそがフィクサチーフです。
フィクサチーフとはビニル樹脂など
のスプレーです。
これを吹き付けることで
木炭や鉛筆の粉を紙に定着させます。
フィクサチーフは吸い込むと
体に悪いので
窓を開けて使いましょう。
また、スプレーの噴出の勢いで
粉が吹き飛んでしまうので
画面から離して
吹き付けましょう。
デッサンの名作
・木炭デッサン
安井曾太郎
安井曾太郎は明治時代、フランスの
美術アカデミーに留学し
デッサンで抜群の成績だったそうです。
西洋ではデッサン=線中心
という文化があるようです。
このため、木炭も「線を引く道具」
として理解されており
このような、明暗を基調とした
木炭デッサンはとても珍しいようです。
日本の美大受験では
木炭デッサンで、モノクロでの
絵画づくりを学ぶため
木炭デッサンでも、線だけでなく
グラデーションをしっかり
作るようです。
安井曾太郎の作品を楽しみたい方は
こちらの画集がおすすめです。
アンドリュー・ワイエス
ワイエスはテンペラや水彩
の名手ですが、鉛筆デッサンも
とてもウマイです。
最小限の線でモチーフの形や質感を
捉えていて、とても参考になります。
磯江毅
とても美しいグラデーションの
デッサンですね。
紙に鉛筆というシンプルな材料でも
画家の細やかな感性があれば
ここまで精妙な物が出来るんですね
鉛筆の表現の豊かな可能性を
教えてくれる作品ですね。
まとめ
今回は
デッサン用画材の特徴
、おすすめ画材、名作について
解説してみました。
木炭デッサンと鉛筆デッサン
それぞれの特徴と必要な画材の使い方
についてまとめましたので
是非参考にしてみてくださいね。
ではまた
↓画材や技法についてはコチラ↓