こんにちは!画家の黒沼です。
今回は段ボールに絵の具を
キレイに塗るコツについての記事です。
〇文化祭の準備
〇幼稚園や保育園でのお遊戯
〇バイト先のポップ作り
などなど様々な場面で役立つ
段ボールに絵の具で絵を描く方法を
解説しているので
是非チェックしてみてください。
目次
段ボールに絵の具で絵を描いた話
高校時代、男子校に通っていた
私は文化祭の時、あっちこっちで
“技法アドバイザー”をやっていました。
男子校なので、絵や工作が好きな生徒が
ほぼおらず、絵の具や材料、工具の使い方
がわからない生徒ばかりだったのです。
文化祭の時はそういった“技法材料の知識”が
必要なお仕事満載なので、あっちこっちで
“技法アドバイザー”が求められたのでした。
そんな文化祭準備期間の時、
最も多かった質問の一つが
「段ボールに色をきれいに塗るには?」
こういった質問でした。
絵を描きなれていない、男子校のみんなは
段ボールに色を塗る時
ポスカなどの色付きマジックで塗って、
鈍~い発色になってしまったり
間違えて水彩絵の具を買ってきて、
段ボールの色が透けちゃってる
看板を作ったりしていました。
そんな時に“技法アドバイザー”の私が
彼らに伝えた方法を今回は紹介していきます。
段ボールに絵の具をキレイに塗れない理由
段ボールには基本的に色がついています。
もちろん白い段ボールも中にはありますが
基本的にスーパーの入り口で
調達してくるような段ボールは
全て黄土色をしていますね。
そしてこれこそが
段ボールに絵の具をキレイに
塗れない理由なわけです。
アクリルガッシュのような
不透明な絵の具を除き
基本的にどんな絵の具でも
若干下地の色が透けます。
なので黄土色をした段ボールの上に
赤い絵の具を塗ると、
キレイな赤には発色せず
暗い赤茶色みたいな色
になってしまうわけです。
段ボールに水彩絵の具は塗れない?
文化祭の買い出しで間違って
水彩絵の具を買ってきて、段ボールの色が
透けちゃってる看板を作ったりしていた子は
基本的にどんな絵の具でも
若干下地の色が透ける。
これを知らなかったです。
水彩絵の具は基本的に真っ白な紙の色を
生かし、半透明な絵の具層を
塗り重ねて描く画材です。
基本的に白い下地の上に塗ってこそ
キレイに発色するわけです。
なので、黄土色の段ボールの上に塗ると
汚ーい暗くて地味な色になってしまいます。
段ボールにオススメの絵の具とは
段ボールにオススメの絵の具は
アクリルガッシュ絵の具、
またはアクリル絵の具だ
と言いたいところですが、
別の物を紹介しておきます。
段ボールの上に絵を描く場合、
基本的に
〇長持ちしなくて良い
〇大きい画面で絵を描く
こういう場面が多いと思います。
(長持ちさせたかったら、
そもそも段ボールには
描かないと思うので。)
ちょうど文化祭の準備や
幼稚園のお遊戯会みたいな
イメージですね。
こういう
〇長持ちしなくて良い
〇大きい画面で絵を描く
にアクリルガッシュ絵の具を使うと
非常にお金がかかってしまいます。
そこでオススメなのが
ネオカラーという大容量絵の具です。
ネオカラーの組成
ネオカラーの組成を
まとめてみました↓
塗装面積
○10~14㎡/1L(1回)
乾燥時間
○30分〜1時間(指触乾燥)
○1~2日(完全乾燥)
使用用途
○POP広告、舞台装飾、屋外看板など
性質/成分
○酢ビ/アクリル共重合樹脂、顔料、水
ネオカラーはターナー色彩から
出ている絵の具で、私も学園祭準備で
よくお世話になりました。
ネオカラーの短期の屋外用絵の具で、
組成はアクリル絵の具に近いようです。
アクリル絵の具なので、乾燥後は
耐水性になるので
濡れても塗膜が
溶けたりしないわけです。
ネオカラーは色の種類や容量(サイズ)
によって値段が違うので注意しましょう。
段ボールに絵の具を塗る下準備
段ボールに絵の具を塗る
下準備方法を具体的に
解説していきます。
ここまでお話した通り
基本的にどんな絵の具でも
若干下地の色が透けます。
先ほど紹介したネオカラーは
アクリル絵の具なので、
下の色を隠蔽しますが、
やはり若干透けます。
黄土色の段ボールの上に黄色のような
色を塗ると、
かなり渋ーい色になってしまいます。
(暗く鈍い黄色は汚い印象を与えます。)
そこでオススメなのが
1回全部真っ白で塗ってしまう!
という方法です。
そんな事したら、絵の具が
倍必要になるじゃないか!
と思うかもしれませんが、この方法が
おそらく段ボールに絵を描く上で
最も無難です。
一度真っ白に塗っておけば、
上に塗った鮮やかな絵の具
が多少透けても
鈍い汚い色になることはありません。
お遊戯会の舞台を
作っている幼稚園の先生
文化祭の模擬店のメニューを
作っている学生さんなどは
是非実践してみてください。
段ボールに絵の具で描くアート
実は段ボールに絵を描くのは
文化祭準備の学生や
幼稚園の先生だけではないのです。
1960年代、アメリカの
現代アートシーンでは
廃棄物を使った現代アート作品
が流行っていました。
ラウシェンバーグやオルデンバーグなど
巨大な作品を廃棄物を組み合わせて
絵画や立体作品を作るのが流行ったのです。
これは大量生産大量消費社会
への問題定期でありましたし
“ありがたいアート作品”をお金で
取引する「アート市場」への
アンチテーゼでもありました。
「お前らが有難がっている
“アート”ってこんなもんじゃい。」
みたいなメッセージです。
しかし彼らはタダの反逆児ではなく、
優れた造形感覚の持ち主で
「作品がカッコいいのです。」
構図がカッコいい
色づかいがカッコいい
画面のバランス感覚がカッコイイ
立体のシルエットがカッコイイ
360度どこからみてもカッコイイ
そんな感じです。
ひょっとしたら一般人には
ゴミの塊にしか見えない
「現代アート」だとしてっも
アート作品を見慣れた作家や批評家は
“ゴミでできた造形物”を見て
その優れた造形感覚ゆえに
カッコイイと思わされてしまう。
そしてゴミに感動させられている
という事実に驚く。
みたいな作品がカッコイイ時代
があったわけです。
(今の時代でも50代以上の方には
ファンは多いと思います。)
だいぶ前フリが長くなりましたが、
こういった60年代アメリカの
現代アートに影響され
多くの若い日本人アーティストも
段ボールや廃棄物でアートを
作ってみた時期があったのです。
段ボールに塗った絵の具を長持ちさせる方法
60年代アメリカの現代アートに影響され
多くの若い日本人アーティストも
段ボールや廃棄物でアートを作ってみた時期
この時期に活躍した日本人アーティストで
今も段ボールで絵を作る作家が
百貨店美術画廊で展示をしているのを
私は見たことがあります。
百貨店美術画廊で展示販売する絵ですから、
いかに前衛的な作品であっても
“ちゃんと長持ちする絵”
である必要があります。
その作家は非常にウマイ方法で
この問題を解決していました。
段ボールで作った絵は
言うまでもなく、長持ちしません。
そもそも段ボールが長い時間
そのままの形で大切に保存される
前提で作られていないからです。
ではどうすれば良いのか?
その作家は
段ボールで作った作品を丸ごと
“ツヤ消し”の透明アクリル樹脂
スプレーでコーティングしていました。
作品全体に透明のアクリル樹脂の
薄い鎧を着せたわけです。
これはウマイ方法です。
透明で艶消しのスプレーなので、
作品の色や質感はスプレー後も
ほとんど変わりません。
そして空気を遮断しているので
変色の不安も少ないです。
(紫外線で若干褪せるかもしれませんが)
またアクリル樹脂の鎧を
着せているわけなので、
段ボールがヘタッってくる
こともないでしょう。
この“艶消し”の樹脂スプレーで保護
というやり方は
結構いろんな場面で使えます。
例えば箔を使った作品の表面保護や
クレヨンで描いた
作品の剝離防止など
なかなか使い勝手が良いわけです。
皆さんが良く知っている
デッサンの後にかける
フィクサチーフも
メカニズムとしては同じです。
あれはうっすら樹脂コーティング
しているわけです。