「デカい絵、描いてどうすんの?」
美大に通っていたころ、私はこんなことを
考えていました。
今回は売れない飾れない大作を
なぜ描かせるのか裏側の事情とともに
解説していきます。
目次
売れない絵を描く理由とは
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美大の教授たちは、大きい絵を描くこと
を勧めてきます。
そして、多くの学生が素直にその教えに従い、
大作を描くのが当たり前な雰囲気が
出来上がります。
最近では、芸大の油画科でも、
入試の段階から大型の作品を
描かせるようです。
美大の授業で描かれた大作は講評終了と
同時に、実家の物置か美大のゴミ捨て場に
移動します。
うまくすると公募展にでて、入賞し、
記念品をもらえたりします。
私はこの一連の流れを見ていると、
どうしても「大作主義」に納得できません。
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日本では大きい絵は売れない
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確かに海外の場合は、大きい作品ほど
売れる場所もあります。
知り合いの作家がシンガポールで
展示した際は、展示作品のうち、
最も大きい絵が売れてそのお客様から、
「もっと大きいものはないのかい?」
といわれたそうです。
また、大作を描くことで画家として
成長できることもあるでしょう。
しかし、日本のアートマーケットで
これまで100枚以上絵を売ってきた
私からすると
大作はほぼ売れません。
30号ですら、たまにしか売れません。
100号なんて、搬入すらできない
こともあります。
そして、当たり前ですが、大作は
運送費も額代もバカになりません。
ほぼ売れない絵を描くのはギャンブル
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大作を描くのは、はっきり申し上げて
ギャンブルです。
多くの方は「画家になる」自体が
ギャンブルなので
そんなこと気にするな
と思うかもしれません。
しかし、それは誤解です。
絵を売るための最適な準備
というのは存在します。
時間と資金を結集して、売れるか
売れないかのギャンブルはよくありません。
ちなみに最も売れるのはSM以下ですね。
百貨店でやる作家は0号以下の
ミニサイズの作品を作る画家も多いです。
でも考えてみれば当たり前で、
日本の広くない住宅の壁に絵を飾る
とすれば、そのくらいのサイズ
になるでしょう。
まあ企業やお店のエントランスとかに
飾るのなら100号とかも
よいかもしれませんがね。
売れない絵を描かせる人たちとは
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美大ではよほどコンセプトがない限り、
0号以下のサイズの支持体を
わざわざ用意して絵を描く
なんて変わり者はいません。
大きい作品を描くのは良いことみたいな
雰囲気があります。
私がいた油画科でもそうでしたが、
日本画科はさらにこの傾向が強いようです。
油画科以上に、「右へならえ」な日本画科では
授業でも支持体のサイズが決まっている
ことが多いようでした。
このサイズ以上じゃないとだめ!
みたいな感じです。
売れない絵の展示はもちろんつまらない
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卒業制作展では、大学院進学のため、
授業の時以上に「右へならえ」で
似たようなサイズ、作風の作品が
並ぶといいます。
知り合いのコレクターさんは
「日本画の卒業制作展はつまらない」
とぼやいていました。
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売れない絵を描かせる本当の理由
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なぜ、そんなことになるのか
ここからはあくまでウワサ話
として聞いてください。
それは美大の日本画科には、
団体展入会者を養成する
ミッションがあるからです。
1年に2回、大作を描いて、
美術館で展示できる。
そのかわりに会費を納めてくれる
メンバーが大量に必要なので、
学生のうちから、大作を定期的に
描く習慣を身に着けさせておくのです。
これがもし本当なら、
本当によくできたシステムです。
美大に通わせられるほど、裕福で、
団体展に入る準備の整った若者が、
毎年数百人輩出されるのですから。
よくできたシステムだと思います。
絵が飛ぶように売れる時代の郷愁
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また大作を描かせる雰囲気には他にも
原因があります。
それは今、美大を率いる指導層が
若いころはとても景気が良く、
卒業制作の大作がバンバン
売れていたからです。
当時をよく知るベテラン画商から、
当時の夢のようなエピソードを
たくさん聞きました。
バブル崩壊後に生まれた私なんかとは、
そもそも社会への期待度が違うわけですね。