絵の具の種類いろいろ アクリル、水彩、油絵の具の違いを解説

「絵の具って色々な種類があるけど、
どう違うの?」

展覧会で私はよくこんな質問を受けます。

今回は油絵の具、水彩絵の具、
アクリル絵の具 などなど

様々な種類の絵具の特徴や使い分け方
についてご紹介します。

初心者にも、玄人にも楽しめると
思うので是非最後まで読んでみて
くださいね。

 

目次

絵の具の種類はいろいろ

絵の具の性質はバインダーで決まる

画材屋さんに行くと、油絵の具、
水彩絵の具、アクリル絵の具などなど
様々な種類の絵の具が売っていますね。

それぞれ、異なる特徴があり、
求める画風や使いやすさで
使い分けると良いでしょう。

 

それぞれ異なる、絵具の特徴は、
バインダーという、糊成分の特徴で
決まります。

絵の具は色の元となる顔料と
糊成分となるバインダーでできています。

油絵の具は顔料+乾性油
水彩絵の具は顔料+アラビアゴム
アクリル絵の具は顔料+アクリル樹脂

でできています。

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2017.10.26

 

絵の具の種類その1:油絵の具

油絵具の特徴をまとめてみました。

油絵具といえば印象派のような凸凹した、
重厚なタッチをイメージされるか
もしれませんね。

 

ただ、油絵の具らしさは
それだけではないんです。

 

艶のある絵肌が得られる

油絵具の特徴は絵の具自体に
艶があるということです。

水彩やアクリル絵の具は
絵具が濡れているときと
乾いているときで、色が少し違います。

これは細密な絵を描く人にとって、
少し不都合です。

絵の一部分の明るさが変わってしまう
からです。

しかし、油絵具は描いているときも、
完成した後も濡れ色のままなので、
このような問題は起きません。

 

時々、完成した油絵具を飾って置いたら、
艶が引いてしまったということがあります。

艶が引いてしまうと、絵を見る角度によって
反射率がかわり、見づらい絵
になってしまうのです。

 

その場合はタブロールツーセという
完成後に表面の艶を整えるワニス
を塗って仕上げましょう。

(くれぐれも、完成後の油絵に
乾性油を塗ったりしないように!
 ちりめんじわが起きます。)

 

乾燥速度が遅い

油絵具は乾性油という
バインダーで練られています。

読んで字のごとく、乾く性質の油で、
亜麻や芥子(それぞれリンシード、
ポピーと呼ばれます)の油で練られています.

 

サラダ油が固まってしまった!ということは
ないですよね。

油にも乾いて固まるものと
固まらないものがあるんです。

 

ただ乾性油は乾くのがとても遅いんです。
そのため、油絵具は乾燥の早い水彩や
アクリル絵の具よりも、

グラデーションを作りやすい
という特徴があります。

 

なかなか乾かないという特性を生かして、
画面上で絵の具を混ぜながら描けるんですね。

 

ただ、その反面、完成に
長い時間がかかってしまいます。

 

水彩やアクリルでは10分で乾くものも、
油絵具では1~3日乾かないことも多いです。

 

透明度が高い

乾性油は高い屈折率を持っています。
細かな説明は省きますが、
屈折率の高いバインダーで練られた
絵の具ほど透明度が高いんですね。

 

グラデーションを作りやすい特性を生かし、
画面上で絵の具を混ぜながら、
幅広い階調を作る(アラプリマ)
            ↓↑

透明度の高さを生かして、
作った階調に半透明な
フィルターをかける(グレーズ技法)

 

 

これの繰り返しで、重厚で
幅広い階調の油絵を描けます。

 

 

厚塗りに向いている

水彩やアクリル絵の具は
絵具の水分が抜けることで固まりますが

油絵具は乾くときに
乾性油と酸素が結びついて固まります。

 

このため、アクリル絵の具で厚塗りをすると
乾いた時に体積が減り、描いている時ほど
厚塗りの迫力がなくなってしまいます。

油絵具は描いた時と乾いた後で
絵の具の体積が変わらないので、

このようなことは起きず、
厚塗り表現に向いています。

 

道具の準備が大変

「油絵ってこんなに道具が多いのか!」

私が油絵を初めて描くときに
顧問の先生に渡された道具の買い物リストを
見て驚いたことをよく覚えています。

 

水彩絵の具の場合
絵具を水に溶けば使えますが

油絵具の場合は専用の油に溶いて使います。

油絵具は乾性油で練られた絵の具でしたが

他にも、揮発油(テレピンなど)
樹脂(ダンマルワニスなど)といった油を
使います。

 

筆も使う色数だけ用意しますし、

豚毛のような剛毛の筆から、

コリンスキーテンのような軟網の筆、

その間の硬さの馬毛など、
様々な種類があります。

 

描き終わったあとやること

筆の手入れや絵の具の処分など
にも手間がかかります。

筆はテレピン(筆洗油)で洗った後、
固形せっけんで洗い

最後に髪の毛用のリンスをして
洗うと長持ちします。

 

洗う時のコツは、絵具は
筆の根元にたまって、固まりやすいため、
根元から毛先へ

絵具をしごきだすように洗いましょう。

絵具は捨てるときは新聞紙にくるんで
水をかけて捨てましょう。

 

油絵具は乾いた後に高温状態で
発火することがあるためです。

 

黄変や亀裂、ちりめんじわなどのトラブルが心配

油絵具は伝統的な画材だけあって
正しい使い方を守らないと
様々なトラブルが起こります。

 

暗い場所で保管しておくと、
絵が黄色くなる黄変が起きますし

乾燥しきってから、乾性油の多い絵の具を
のせるとしわがよる
ちりめんじわのリスクもあります。

また、湿度の変化の多い場所では、
支持体の伸縮に絵の具層が耐えられずに
亀裂ができることもあります。

 

[おすすめ画材紹介]油絵の具やキャンバスなど油絵の道具を紹介

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絵の具の種類その2:水彩絵の具

紙があれば手軽に描ける

水彩絵の具の特徴は
絵具、筆、紙、水さえあれば描ける
手軽さでしょう。

道具がシンプルで、準備も簡単なので、
携帯用の水彩セットを持っていれば、
旅先でスケッチすることもできます。

 

 

チューブ入りと固形タイプがある

水彩絵の具にはチューブ入りのものと
固形タイプのものがあります。

大きな作品をじっくり描くときには
チューブ入りタイプを

旅先で手軽にスケッチを楽しむときには
固形タイプを選ぶと良いでしょう。

 

 

固形タイプのものにも
パンカラーケーキカラーのものがあります。

パンカラーは、半乾きの状態の
透明水彩絵の具です。

ブロック状の絵の具で、キャラメル包み
されたものも多いため、
キャラメルカラーとも呼ばれます。

大きい順にホールパン(30㎜×12㎜)
ハーフパン(15㎜×12㎜)
クォーターパン(11㎜×11㎜)

があります。

 

ケーキカラーは乾燥させて粉状にした
絵の具をプレスしたものです。

透明水彩由来のものと、不透明水彩由来
のものがあるようです。

 

透明感のある繊細な表現ができる

水彩絵の具は基本的に、白い紙にセロファン
を貼り付けていくような工程で描きます。

つまり、塗れば塗るほど
暗くなるということです。

 

なので画面上で白を残したい部分、
明るいゾーンはどこなのか
意識しながら描き進めましょう。

 

これができるようになると、紙の白を
生かした最低限のタッチで描かれた
おしゃれな絵が描けるようになります。

 

乾燥後も濡らせば修正できる


「塗りすぎて、暗くなってしまった…」

そんな時は濡らしたティッシュや海綿
使って、絵具を溶かしてふき取りましょう。

 

水彩絵の具は水に溶ける絵具なので、
ぬらしてふき取れば明るくできます。

ただ、描く前の紙の白さまでは戻せないです。

 

マスキングインクも便利

描き出す前の真っ白な紙の白さを残して
描きたい場合はマスキングインクが便利です。

塗った部分にゴム状の塗膜ができて、
絵具がのらなくなります。

 

完成後に指の腹でこすると、
はがれて紙の真っ白がでてきます。

注意するポイントは筆につけたままにすると
筆がゴム状に固まってしまうことです。

 

 

強度が低く、色あせしやすい

水彩で描かれた名画の展示を
見たことがあるでしょうか?

多くが薄暗~い部屋の、展示ケースの中に
飾ってあると思います。

 

水彩絵の具は他の絵具に比べ、耐光性が
低いので、色褪せしやすいんです。

 

服についても大丈夫

絵の具といえば、ほとんどの方が
小学生の時に図工で使った

水彩絵の具をイメージするかと思います。

水彩絵の具は一度、服に付着して
乾燥しても、水で濡らせば落ちます。

 

 

小学生が絵の具でふざけても
お母さんが簡単に服を洗濯できる

というメリットが水彩絵の具には
あり、それが小学生には水彩絵の具
を使わせる理由でもあるのです。

ちなみに、同じ理由で
中学生にも、水で溶ける

ポスターカラーを使わせている学校が
結構あります。

 

 

中学生の授業ではデザインも学ぶため
マットに塗れる絵の具が必要なのですが

アクリル絵具の場合、乾くと耐水性に
なるため、一度服に付着して乾くと

落ちないのです。

その点、ポスターカラーは
マットに塗れる上に、水で落ちる
ので安心なんですね。

 

透明水彩絵の具と不透明水彩絵の具

水彩絵の具には透明水彩絵の具
不透明水彩絵の具があります。

どちらも、アラビアゴムで練られた絵の具
ですが、アラビアゴムの濃度が違います。

 

透明水彩絵の具

透明水彩絵の具は大量の水で薄めても
画面に貼りついていられるように、
高濃度のアラビアゴムで練られています。

アラビアゴムは高濃度状態だと、
ゴムボールのような硬さをしています。

 

なので、工場の巨大なロールミルの力で
練り上げて作っています。

透明水彩絵の具がやや高価なのは
このためです。

 

大量の水で薄めても定着するので、
透明感のある表現ができます。

 

 

不透明水彩絵の具

不透明水彩絵の具は小学校で配られるような
いわゆる水彩絵の具です。

紙の白を生かした表現に向いているのは
透明水彩絵の具と同じですが、

マットで乾いた印象の仕上がりが特徴です。

 

安価で服についても水で落ちるので
手軽さナンバーワンの絵具でしょう。

 

 

ポスターカラー

ポスターカラーは不透明水彩の1種です。

アラビアゴムの比率が少なめで、
塗りムラが出づらいのが特徴です。

ただ、塗膜が溶けやすいので、
丁寧な筆運びをしないと
下の絵の具層が溶けてしまうことも多いです。

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絵の具の種類その3:アクリル絵の具

乾燥が早い

アクリル絵の具は絵具の中で
最も乾燥が早く
ドライヤーで乾かすこともできるため
非常に短時間で描き進めることができます。

 

不透明で細かい描写がしやすい

油絵具とは異なり、絵具が柔らかい状態でも
不透明に塗りつぶすことができるので

筆先を尖らせて不透明で細い線を引いたり
することもでき緻密な作業にも向いています。

よくアニメの背景美術にある
緻密な風景画もアナログで描く場合は
アクリルガッシュが使われるようです。

 

乾くと耐水性になる

アクリル絵の具は乾くと
耐水性の強い塗膜ができます。

なので

「あらいタッチで塗っていたら、
下の絵の具層が溶けてしまった!」

という水彩や油彩で
よくあるトラブルがありません。

ただ、服につくと水で落とせないので
注意しましょう。

 

 

メディウムの種類が豊富

アクリル絵の具には質感を変えるための
様々なメディウムが用意されています。

モデリングペーストを混ぜれば
印象派のような盛り上げもできますし

ジェルメディウムを混ぜれば、古典絵画の
グレーズ技法のような透明な膜も作れます。

グロスメディウムを使えば、油絵のような
強い艶を出すこともできますし

ファブリックメディウムを混ぜれば、
Tシャツやエコバックに塗ることもできます。

 

また、プライマーという地塗り剤もあり、
これを使えば、ガラスや陶器、金属に
描くこともできます。

 

グラデーションを作りづらい

アクリル絵の具は乾燥が早いため、
画面上で色を混ぜることができません。

油絵の具とは違い、グラデーションを
作るのが苦手なんですね。

 

しかし、リターダーを混ぜることで、
適度に乾燥が遅くなり、画面上で
絵の具を混ぜられるようになります。

これを使えばグラデーションも
作りやすいです。

 

アクリルガッシュとアクリルとの違い

アクリル絵の具にも、
ガッシュとアクリルといった種類があります。

アクリルガッシュ

アクリルガッシュは不透明で
マットな絵の具です。

ポスターやイラストといった
べた塗りが必要な時に便利です。

 

あまり厚塗りすると、ひび割れたり
するので注意しましょう。

 

 

アクリル絵の具

アクリル絵の具はガッシュほど不透明で
マットではありませんが、
マットな塗りに向いています。

最近では透明度が高い独自のアクリル樹脂
を使ったリキテックスプライムなども出ており

 

油絵具の透明色のような
透明な絵の具もあります。

ちなみに私は普段の制作では
アクリル絵の具のリキテックスプライムを
使っています。

 

 

合成繊維の筆がおすすめ

アクリル絵の具を使う場合
イタチや馬などの獣毛の筆ではなく

ナイロンなどの合成繊維の筆を
使うのがおすすめです。

 

アクリル絵の具を使った筆を長持ちさせる
のは難しいので、基本的には
使い捨て前提で筆を選びましょう。

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絵の具の種類その4:日本画用絵の具

様々な天然石を砕いて作った
岩絵の具(顔料)を動物のコラーゲンである
で練り上げて作ります。

膠には、ウサギ、牛、魚など
様々な種類があり、特徴も異なります。

 

ただ、岩絵の具は現在はほとんど
人工顔料から作るようです。

岩絵の具には粒のサイズが何種類かあり、
同じサイズの粒の絵具同士なら混ぜられます。

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絵の具の種類その5:パステル

顔料に油脂やロウを混ぜて
棒状に固めて作ります。

他の絵具のように混色できないため、
多くの色が用意されています。

 

クレヨンのように粘着剤が入っていないため
塗っていてもカスが出ません。

 

 

パステルの種類

ソフトパステル

ソフトパステルは最も柔らかいタイプで、
軽やかなさらっとした表現から、
こってりと描きこむ表現まで幅広く使えます。

 

ハードパステル

ハードパステルは硬めの描き味を
生かしたクロッキーなどの制作で役立ちます。

 

セミハードパステル

両者の中間の硬さのものです。

 

完成後は定着剤を

パステルには最低限のバインダーしか
含まれていないため、顔料そのものの
輝きが生きる反面、定着力が弱いです。

そのため、完成後にフィクサチーフなどの、
定着剤をスプレーします。

定着剤はフィクサチーフが最もポピュラーで、
エアーゾルタイプの缶入りスプレーが
便利です。

成分は合成樹脂で、デッサンの作品表面を
樹脂コーティングしてくれます。

また、定着力の弱さを補うためにも、

キャンソン・ミ・タント紙のような
粗目の紙がおすすめです。

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まとめ

・絵の具の特徴はバインダーで決まる
・絵の具は求める絵肌や使い勝手で決める
・パステルなどは定着剤が必要

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