「抽象絵画はよくわからない。」
「抽象絵画は売れないよ。」
そう言われて、傷ついた抽象画家は
多いと思います。
なぜ、抽象画はわからない人が
多いのでしょうか?
今回は日本人にとって抽象画が
よくわからない理由を解説していきます。
目次
抽象画家は誰もがもともと具象画家?
![](https://i0.wp.com/kurohaku.com/wp-content/uploads/2019/02/289e41205e1732861f230976f95181721.jpg?resize=728%2C549)
抽象画家で有名な方は多くの場合、
具象絵画を描いていた時期があります。
上の絵は具象時代のモンドリアンの絵
ですが、これは枯れた木の枝を描いた
ものなんです。
絵画科で美術を専門的に勉強した人は、
学生時代に、写実的な具象絵画や
デッサンの技術をひたすら磨いてきた
ことでしょう。
何10枚と写実的で緻密な絵を描くうちに、
「モチーフや空間」をリアルに見せるための
コツをつかんでいきます。
![](https://i0.wp.com/kurohaku.com/wp-content/uploads/2019/02/275ff9ab2989e32071de15a1b5e520e3.jpg?resize=728%2C466)
画面の全てを描かなくても、あるポイントだけ
を描けば、リアルな印象の絵が描けることに
気づくわけです。
この話は、限られた時間で、絵を描き
提出する必要がある美大受験生には
よくわかると思います。
そして、絵画科の人間は、
「描かずして描く」技術を磨いていきます。
構図や物同士の重なり方、色の組み合わせを
工夫することで、ほとんど描かなくても
空間を感じる絵を描けるようになっていきます。
抽象絵画がわかるのは具象絵画を見飽きた人だけ?
![](https://i0.wp.com/kurohaku.com/wp-content/uploads/2017/09/living-room-1157051_1920.jpg?resize=728%2C485)
抽象絵画の見方がわからないのは
具象画を飽きるほど見ていないから
かもしれません。
絵を見る目の洗練は、絵描きだけ
でなく、コレクターさんにもおきます。
コレクターさんは多くのリアルな絵を
鑑賞することで、リアルな絵を
リアルたらしめる【リアルさのエッセンス】
を見つけます。
リアルさだけではありません。
迫力のある写実的な絵をたくさん見るうちに、
【迫力のエッセンス】を
静けさを感じる絵をたくさん見るうちに
【静けさのエッセンス】を
みつけていきます。
このような、絵描きとコレクターさんの
【目の成長】が歴史を通して
進んでいったのが、ヨーロッパだったわけです。
王侯貴族ではない市民が初めて絵を所有して
楽しんだのはおそらく17世紀のオランダあたりか
と思います。
![](https://i0.wp.com/kurohaku.com/wp-content/uploads/2017/10/fruitsti1.jpg?resize=728%2C504)
この頃、市民が好んだ絵は、こんな感じでした。
誰にとっても綺麗でリアルな絵ですね。
しかし、絵描きもコレクターさんも、
数多くこういう絵を見るたびに飽きてきます。
抽象絵画の描き方と考え方
抽象絵画の描き方と考え方
をステップごとに解説していきます。
![](https://i0.wp.com/kurohaku.com/wp-content/uploads/2019/02/3.jpg?resize=700%2C545)
より洗練された、エッセンスの抽出された
絵画を見たくなるわけです。
![](https://i0.wp.com/kurohaku.com/wp-content/uploads/2019/02/1.jpg?resize=700%2C545)
![](https://i0.wp.com/kurohaku.com/wp-content/uploads/2019/02/2.jpg?resize=700%2C545)
![](https://i0.wp.com/kurohaku.com/wp-content/uploads/2019/02/3.jpg?resize=700%2C545)
すると、こんな感じで、どんどん色と形が
抽象的になっていきます。
これらは様々な時代の具象絵画の色数を減らし、
エッジの単純化した画像です。
何が描かれているかよくわからないけど、
オリジナル作品が持っていた、迫力や静けさを
感じるエッセンス抽出されたものになっています。
つまり、まとめると抽象画がわからないのは、
具象絵画を飽きるほど見ていないからなんですね。
抽象絵画は誰にでも描けるのか
![](https://i0.wp.com/kurohaku.com/wp-content/uploads/2018/07/abstract-2468874_1920.jpg?resize=728%2C529&ssl=1)
抽象絵画って誰にでも描けそう。
絵の具ぶつければ抽象画になる。
そんな意見を聞くことも多いのですが
これは間違っていると思います。
ここまで説明した通り
抽象画は具象画のエッセンスのみを
抽出したものです。
なので、キャンバスに絵の具を
ぶつけただけでは
抽象画風の何かしか生まれません。
少々嫌な言い方になってしまいますが
絵を何枚も描いてきた絵の専門家
は抽象画と抽象画風の何か
を見分けることができます。
絵の専門的な勉強をしていない
一般の方にはわからない違いが
わかるのです。(偉そうですみません。)
選び抜かれた色彩と形の配置
なのか、そうでないのかは一目瞭然
なのです。
もちろん、緻密で写実的な絵と
比べれば、
抽象画の制作に求められる技術は
低いでしょう。
しかし、絵の具をぶつければ
なんでも抽象画になるわけではないのです。
抽象絵画も具象画のように売れる時代は来るのか
![](https://i0.wp.com/kurohaku.com/wp-content/uploads/2019/02/gallery-2931925_12801.jpg?resize=728%2C421)
抽象絵画も具象画のように
売れる時代は来るのでしょうか。
ホキ美術館の誕生や
アートコレクターの表紙を見れば
わかるように、
写実絵画市場では
バブルが起きているようです。
プロの画家として、絵を売る画家も
その画家から作品を買って家に飾って
楽しむコレクターさんが
日本ではまだまだ少ないですが
この両者が増えていくと、
「具象絵画は飾り飽きたから、抽象画も欲しい」
という人が増えていくかもしれません。
抽象絵画の有名な画家や作品
![](https://i0.wp.com/kurohaku.com/wp-content/uploads/2018/01/11a7843a1870494e99887bbd027fd847.jpg?resize=309%2C356&ssl=1)
抽象画の巨匠で有名な画家を
何人か紹介します。
これから紹介する彼らが抽象画の歴史を
作ったといっても過言ではないので
彼らの作風や特徴を知っておくだけで
抽象画の見方が分かるように
なるかもしれません。
ワシリー・カンディンスキー
![](https://i0.wp.com/kurohaku.com/wp-content/uploads/2018/01/0021.jpg?resize=559%2C381&ssl=1)
前に自分が描いた絵を逆さまに置いておいたら
素晴らしい名画に見えた。
カンディンスキーはこんな体験をし、
抽象画の可能性を見出したようです。
具象絵画を逆さまにすれば、一瞬
何が描いてあるのかわからない絵に
なることもあります。
絵の具のタッチが粗い絵や、色彩や
構図が独特の絵の場合、そんなことは
起きやすいかもしれません。
何が描いてあるのかわからない絵は
純粋に色と形の配置のみで
美しいかどうかが判断できるわけです。
モチーフの形や色がリアルに立体感や
質感を持って描けているかどうかは
どうでもよくなるわけです。
カンディンスキーはそんな体験を
通して、純粋に色と形の配置の美しさ
を追求する抽象画を始めたようです。
ピエト・モンドリアン
![](https://i0.wp.com/kurohaku.com/wp-content/uploads/2018/01/image-1.jpg?resize=584%2C592&ssl=1)
モンドリアンの抽象画は、カンディンスキーよりも
理知的な理論に支えられています。
この世のものは全て、垂直、水平と三原色で
再現できる
という理論に基づいてモンドリアンの作品は
描かれているようです。
彼の作品は、直線が全てフリーハンドで
描かれているので、実物を見ると
直線にも微妙な抑揚や強弱があり
画像で見るよりも、人の手技を感じる
ことができます。
カジミール・マレーヴィチ
![](https://i0.wp.com/kurohaku.com/wp-content/uploads/2018/01/d210a210-s.jpg?resize=396%2C399&ssl=1)
マレーヴィチの作品はモンドリアン以上に
ミニマルなものになっています。
色彩と形態の要素を極限までそぎ落とし
精神性や神秘すら感じるストイックな
絵になっていて
極限まで、感覚を遮断したような
理知的なものになっています。
モンドリアンやマレーヴィチのような
理知的で静的な抽象画を
冷たい抽象と呼ぶことがあり、
これはピカソのキュビズムの理論に
影響を受けたものになっています。
ジャクソン・ポロック
![](https://i0.wp.com/kurohaku.com/wp-content/uploads/2018/01/fd60ebb70697af44783cd44c4d3c40a6.jpg?resize=600%2C451&ssl=1)
ポロックの作品はそれまでのヨーロッパの
絵画が積み上げてきた、構図の美意識を
完全に無視して登場した
「宇宙から来たような絵画」です。
このような絵が歴史に名を残しているのは
歴史のないアメリカのアートを批評の力で
1からブランディングしようと努力した
クレメント・グリンバーグの功績による
所が大きいです。
これまでのヨーロッパの絵画が常に
重要視してきた、「字と図の関係」
などの、画面上の強弱、主従関係を
一切廃除した
画面の全てが均質なオールオーバー
という形式の絵画となっています。
このような激しい色彩やタッチの
抽象画を
熱い抽象と呼ぶことがあり
マチスの絵画理論に影響を受けている
と指摘する方もいます。
マーク・ロスコ
![](https://i0.wp.com/kurohaku.com/wp-content/uploads/2018/01/ダウンロード-8.jpg?resize=277%2C359&ssl=1)
ロスコの絵画は強い色彩を用いながらも
少ない造形要素で静かな雰囲気を
持っています。
これは戦後のアメリカの落ち込んだ人々の
心を癒す、瞑想に誘うような絵画として
評価されたようです。
バーネット・ニューマン
![](https://i0.wp.com/kurohaku.com/wp-content/uploads/2019/02/mig.jpg?resize=300%2C298&ssl=1)
ニューマンの作品もロスコ同様
強い色彩を使いつつも、少ない造形要素で
見る者を瞑想へ誘うような絵と
なっています。
超巨大な赤く塗られたキャンバスに
細い線が一本
のような作品が多く、絵の前に立つと
色の面に飲み込まれるような
不思議な体験ができます。
この頃のアメリカで流行った
ロスコやニューマンのような巨大な
色面のミニマルな絵画を
カラーフィールドペインティング
と呼びます。
他にも数多くの抽象画の巨匠は
いますが、有名な画家5名を
ご紹介しました。
抽象画は人それぞれ作風が
大きく違うのでお気に入りの
抽象画家を見つけてみてください。