【極秘】ベテラン職業画家の収入のカラクリ
今回はオーダーメイド作品受注の重要性
についてお話ししていきます。
絵を売る仕事が最高である理由
デザイン事務所がしんどい理由
「自信を持って描いた絵が没にされる。」
「なんでこんなことまでやらなきゃ
いけないの?」
デザイン業界で働く方には
こんな悩みを持つ方も多いようです。
私の知り合いで画家に転身した方がいますが、
彼女は就職氷河期に有名広告代理店に入った
エリートでした。
しかしデザイン業界特有の悩みから、
自ら職をやめ、画家に転身したようでした。
画家はデザイナーと違い、収入に
波があります。
そして、展覧会直前は
死ぬほど忙しくなります。
しかし、「あの頃よりはマシ。」
くたくたになりながらも
とても楽しそうにそう答えていました。
デザイナーは画家とは違い、描いた絵が
誰かに敬意を払われたりすることは
少ないようです。
そして、分業が基本ですから、
0から構想を練り、材料を集め、
技法を工夫し、展覧会の準備をして
お客様に接客をして、喜んで買って頂く
そんな0から10まで自分で作り上げる
「創作の喜び」からは切り離されています。
デザイナーはもともと絵が好きで始めたのに、
昔のように絵を描く楽しみを感じられなく
なっている方が多いようです。
老後の趣味で絵を描いたり、船の模型を
作ったり、水槽で魚を育てたり
そんな方は結構いますよね。
それはやはり、0から物を生み出す達成感、
創作の喜びは何にも
代えがたいからなのでしょう。
絵画ビジネスの方程式
あの人はなぜ絵で食っていけるのか
先生や教授といった絵を教える仕事もせず、
他の仕事をすることもなく、
絵の収入だけで生活する「専業の画家」は
極稀にですが、いらっしゃいます。
彼らはどのように生計を
たてているのでしょうか?
ここまでで、紹介した通り、展覧会での
絵の販売収益は画商、会場、画家の
3者で分け合います。
そして、この形の収入は、
売り切り型のビジネスなので、
展覧会が終わるまで、
収入は予想できません。
私自身も収入の柱を複数持っていて、
絵の収入が大部分ですが、
この収入には波があります。
展覧会での絵の販売はどんなに
完璧に準備をしても全く売れない
こともあるのです。
これは精神衛生上良くないです。
お金の不安がある状態で落ち着いて
絵など描いている場合ではありません。
それでは、極稀にいる専業の画家は
どうしているのでしょうか?
その答えがオーダーメイド作品
の制作なのです。
オーダーメイド作品の直接受注の場合、
絵の売り上げの100%が画家
の手元に入ります。
画家から直接作品を注文してくれる
お得意様を複数名抱えたベテラン作家は、
こうして生計を立てられるのです。
一生絵を続けるために画家が考えるべき「LTV」
顧客数×売上単価×成約率=売上
これが良くビジネスの世界で
語られる方程式でした。
しかし、最近では月額課金型の
ビジネスが台頭し、
LTV(ライフタイムバリュー)という
考え方が広まっているようです。
これは、1人のお客様が一生のうちに、
いくら支払ってくれるか という指標です。
オーダーメイド作品で生計をたてる
専業画家にとって、この指標は重要です。
オーダーメイド作品を頼んでくれるような
お客様は、そう多くありません。
そこで、1人のファンから何回オーダー
してもらえるか、が重要になってくるのです。
リピーターの数が画家の実力
幸い、私には今も複数人、定期的に
オーダ-メイド作品を注文してくださる
方がいらっしゃいます。
受注した作品を届けに上がると、
その日に次のオーダーの話し合いが
始まる
という感じのリピートが起こるのです。
これは本当に有難いことです。
リピートしてくれるコレクターさんと
繋がるための確実なノウハウは残念ながら、
ありませんが
毎回、期待を上回るクオリティーの作品を
お届けすることが重要だとは思います。
そして、お届けに上がる時は
最高に優雅で楽しい時間を
提供する意識をお忘れなく。
絵を買うお客様は作品のクオリティーにのみ
興味があるのではなく、
画家に絵を頼んで、世界に1枚の絵を
描いてもらうという【特別な出来事】に
価値を感じてくださっているのです。
隠れコレクターさんとの出会い方
良い画商と出会うべし
第1章でもお話ししましたが、
良い画商さんは豊富な顧客数、
コネクションを持っています。
そして、取り扱う作家と相性の良い
お客様に招待状を送ったり、
コネクションを作ったりしてくれます。
実際、私も所属するギャラリーの先輩作家
のコレクターさんを画商さんから、
ご紹介頂き、定期的にオーダー作品を
頼んで頂ける間柄になりました。
また、良い画商さんの元にいると、
様々な仕事を代行してもらえます。
実際私も壁画制作をオーダーされた時、
見積もりの作成や、日程の調整、
保険の加入,などの取材してもらった
とのやりとり、お客様とのやりとりを
画商さんに担当してもらうことで、
壁画の制作に集中することができました。
もちろん、完成イメージをお客様と共有する
場面では作家自身も話し合いに参加しました。
図書館司書さんとの思い出
大学生の頃から、日本全国の百貨店での
展示に参加していた私は4年生の頃
ようやく、地元神奈川の百貨店での
展示が実現しました。
地元での開催ということもあり、
これまでお世話になった方々が
数多くに見来てくださいました。
母校の高校の先生も見に来てくれ、
展示の後ご飯を御馳走になったりと、
とても楽しい時間を
過ごさせて頂きました。
食事の間、見に来てくれた先生方と
話をしていると、図書館の司書の先生が
こんなことを聞いてきました。
「DMに載っているこの桜の絵は
もう売れちゃったんだよね~。
これ狙ってたんだけどなぁ~。」
DMに掲載された桜の絵は、
その先生が来られた時には
既に売約済でした。
そこで、
「お時間を頂ければ、同じ構図で
もう一枚描くことはできますよ。」
と提案しました。
これまでに私は何度も、この
「同じ構図でもう一枚」というオーダー
を経験しており、一度もクレームが
なかったので、
自信を持って提案する
ことができました。
その先生は喜んで、頼んでくれ、
完成した作品にも
満足してくださいました。
それだけでなく、さらに大きい
サイズの絵を注文してくださいました。
「私、歌舞伎が好きだから、
その演目をイメージした絵を、
このくらいのサイズで描いて
もらえるかな?」
遠慮がちにそんなオーダーを
頂きました。
もちろん、私は快諾しご予算と
サイズ、納期を確認し、
次回会う時までに下絵と額装イメージ
を用意することを約束しました。
そして、この絵も完成しお届けすると、
なんとまた、同じサイズの絵を別のお題で
注文してくださいました。
このように、友人、知人に展覧会の案内
を送ったことをきっかけに、
隠れコレクターさんが見つかり、
定期的に注文をとり、
100%の画料を頂けるという
宮廷画家のような仕事を
とれることもあるのです。
引退記念詩集を出版したおばあさんの話
「あなたの作品は前から気になっていたの。
でもどうせなら、オーダーメイドしたいと
思って買わずにいたの。」
同じ会場で繰り返し展示していると、
こんな嬉しいお言葉を頂くこともあります。
このお客様は仕事の引退を記念して、
それまで書き貯めていた詩をまとめた
詩集を作るという企画をたてていました。
そして、なんとその詩集を商業出版し、
国会図書館に納め、その詩集をテーマにした
絵を画家にオーダーし、美術館で展覧会を開く
という一大プロジェクトも考えていました。
この企画は今も進行中です。
そんなプロジェクトの一環として、
私の元に、詩をモチーフにした
絵のオーダーが入りました。
最終的に注文の項目は
〇詩を画面に入れること
〇黄金背景技法で空と海を
仕上げること
〇波と雲を刻み線の技法で仕上げること
〇赤富士を多様な赤で複雑な色の変化を
感じるように仕上げること
など多岐にわたりましたが、
全く負担にはなりませんでした。
なぜなら、そのお客様は私の作品を展覧会で
何度も見ており、私の作風を
理解していたからなのです。
注文の項目はどれも、普段の私の作風を
考慮した、作家への敬意すら感じる
内容だったのです。
実際、このお客様がこのオーダーを
思い立ったきっかけは、
展覧会で私のこの作品を見て
気に入ったからなんだそうです。
この作品の赤と金の組み合わせ、
刻み線の表情を気に入り
注文内容を決めたそうです。
このように、展覧会を見たことのある
お客様からのオーダーの場合、
作風を十分に理解してもらっているので、
スムーズに完成イメージを共有
できることが多いのです。
これも、展覧会経験を積んでから
オーダーメイドを手掛けるのを
オススメしている理由の一つなんです。