みなさんこんにちは!

今回はこのオンライン絵画教室のアクリル編
で出題したワーク作品の講評会をやっていこうと思います。

あなたが今より良い絵を描けるようになる
たくさんの気付きがあると思うので
是非最後までチェックしてみてくださいね。

 

「他の人の“解釈”を見て学ぶ」

まず最初に、講評会をやる意味や目的についてお話していきます。

美大では定期的に描いた作品をプレゼンし、
教授からコメントをもらう講評会というイベントがあります。

美大の講評会では、学生がそれぞれの解釈で課題に取り組み、
独自の作品を提出するので、
作品の形式や見た目は本当に皆バラバラです。

 

これに対して、美大受験予備校では、基本的に
学生全員が同じモチーフを描きます。

そして基本的にリアルに描くことを目的っとしているので、
同じような絵ばかりが並びます。

 

美大の課題では、表現やプレゼンの仕方などを学ぶのに対し
美大受験予備校は受験に勝ち抜くためのキソ技術を学ぶので

このような違いが売れます。

 

 

このオンライン絵画教室は絵画のキソ的な技術を
学ぶことが目的なので、どちらかといえば
美大よりも予備校のような講評になりますね。

さて、同じような絵ばかりがならぶ、
予備校の講評会なわけですが

こんな講評会からも
実に様々なことが学べます。

 

一見みな同じように写真のような
リアルな絵を描いているように見えますが

それぞれ違いがあるのです。

一口にリアルな絵といっても描いた人の数だけ、
リアルさの解釈の種類があるのです。

例えば

この人は赤い花をオレンジっぽく描く癖があるけど、
隣の人は紫っぽく描く癖があるとか

この人は全体的に明るい色で絵を描くとか

あの人は主役の周りの空間を描くような
構図で毎回絵を描く

とかです。

 

こういったリアルな絵を描く上で無意識に
にじみ出る細かいこだわりや癖が、
あなたの個性だったりするのですが

これは一人でこもって絵を描いていると
なかなか自覚できません。

 

同じようなモチーフを描く仲間が周りにいて、
彼等の作品と自分の作品を比較することで、
初めて気付いたりするものなのです。

「他の人の“解釈”を見て学ぶ」こういった姿勢で
講評会に参加すると、より成長できるわけですね。

それでは前置きが長くなりましたが
アクリル編の講評会を始めていきましょう。

 

まず最初はコチラの課題です。

この課題ではモチーフの固有色を生かした絵
を描くための色彩理論を実践しました。

一見緑一色に見えるピーマンも

明るい部分をやや黄緑っぽく
暗い部分をやや青っぽく描く

そして明るい部分は鈍い彩度が低い色で
中間の明るさの部分は鮮やかな色で
暗い部分はやや彩度が高い色で

描く

このルールさえ守っていれば、たったの3色で
自然な第一印象のピーマンを描ける

こんな課題でした。

この課題で提出頂いた
ワーク作品を講評していきます。

 

まずはコチラ。

 

良いですね。

ほとんど細かい描写をしなくてもこのように、
明暗の形を最適な色で塗り分けるだけで、
モチーフの印象は再現できてしまいます。

コチラの作品は、明暗を正確にとらえることが
出来ていて素晴らしいです。
作業も丁寧で良いでしょう。

 

ただ、惜しいポイントは

再度のコントロールと色味のコントロールが
出来ていないことです。

明るい部分を鈍めの黄緑で
暗い部分をもう少し青っぽいやや鮮やかな陰色で
塗ることができると、さらに良くなると思います。

 

お次はコチラの作品です。

これはかなり良いですね。
なぜか背景にショッキングピンクがぬってありますが

図像の部分はほぼ完璧です。

明るい部分はちょうど良い鈍さの黄緑ですし、
ヘタの部分の細かい光沢の形も見事です。

 

カゲの中も微妙な青みを感じる
やや鮮やかな陰色が塗られています。

また作業も非常に丁寧ですね。インクジェットプリンターで
印刷したかのようなフラットな面を塗れています。
紙の白が透けてしまっている部分もありません。

素晴らしいです。

 

お次はコチラの課題です。

コチラの課題は明るい部分をオレンジのような暖色で、
暗い部分を青のような寒色でまとめて描くと

劇的な光を色の力で表現できる
ということを解説した課題でした。

 

この回のモチーフはハクチョウです。

ハクチョウは言うまでもなく、
白いモチーフなわけですが、

日没直前の夕日のような光を浴びると、
このように

明るい部分は黄色からオレンジっぽい色で
暗い部分は空の色に変化するわけです。

これを再現するワークを提出して頂きました。

まずはコチラの作品です。

最初にこのワーク作品を見た時、
私はうますぎて驚きました。

作業の細かさ、ハクチョウらしい形、
色彩理論の応用、全てバッチリです。

欲を言えば、明るいゾーンと中間の明るさのゾーンを
もう、ほんの少しだけ鮮やかにすると
良いかもしれません。

また、明暗の境界線付近に現れる細かい形の変化も
再現できるとさらに良いでしょう。

 

コチラのワーク作品を提出された方は
色で光を表現する力を手に入れました。

是非普段の制作でもこの力を生かして
ダイナミックで鮮やかな光を描いてほしいな
と思います。

 

お次はコチラの作品です。

コチラの作品もこの課題の条件を
しっかりクリアできています。

この色彩理論の素晴らしい所は、

最適な明度、彩度、色相の色を
3色選んで画面を塗り分ける
ことさえできれば

細かく描くことなく、モチーフの自然な
第一印象を再現できてしまう

 ということです。

これは非常に重要なことです。

モチーフの第一印象をバッチリ色で
とらえていれば、その絵を遠くから見たときに

すごそうな絵がある!
となるからです。

 

このワーク作品は画面を大まかに塗り分ける
だけでモチーフの自然な第一印象を
再現できています。

欲を言えば、明るい部分の彩度をもう少しだけ
下げて白っぽくしても良かった
かもしれません。

 

また、明暗の境界線付近の細かな形を
追うとさらに良くなるでしょう。

 

お次はコチラの課題です。

この課題では、炎の光や夕焼け空のような
光を再現する色彩理論を紹介しました。

基本的な考え方はハクチョウの時と同じです。

明るい部分はやや黄色っぽく鈍く
中間の明るさは鮮やかに
暗い部分は青っぽくやや鮮やかに

です。

 

ハクチョウの時は暗い部分を青で描いていました。
しかし今回は赤紫色で描いています。

ハクチョウの時は中間の明るさがオレンジで
暗い部分が青でした。

この2色は補色なので、強いコントラストが
画面に生まれます。

 

劇的な光を表現する時は明暗のコントラスト
だけでなく、色味のコントラストも使うと
良いワケです。

今回のケーキの場合、中間の明るさが
オレンジで暗い部分が赤紫色です。

色相がそんなに離れていないわけです。

 

なので、優しい包み込まれるような
ムーディーな光になっています。

それではワーク作品の講評に
はいっていきます。
まずはコチラの作品です。

コチラの作品はかなり正確に色彩理論を再現
できています。

最適な3つの色が正確な光の形、
カゲの形の中に塗られているので、

この絵を目を細めて見ると
ホンモノソックリの臨場感があります。

惜しいポイントは明るい部分の密度です。

 

炎の周りはまだ粗い筆のタッチが見えています。

この部分を筆のタッチが見えない
細かいグラデーションで追い切れると
さらに良くなるでしょう。

また、明暗の境界線付近の
情報量もまだ少ないですね。

 

ここの細かい形の変化や微妙な色の変化を
追えるとさらにスゴイ作品になると思います。

続いてはコチラの作品です。

こちらもなかなか良い作品ですね。

やや暗めの設定ですが、
モチーフの自然な第一印象を
とらえられています。

最適な色を配置できていますね。

惜しいポイントはこちらも
明るい部分の密度ですね。

 

炎の周りはまだ粗い筆のタッチが見えています。

この部分を筆のタッチが見えない
細かいグラデーションで追い切れると
さらに良くなるでしょう。

また、明暗の境界線付近の情報量も
まだ少ないですね。

 

ここの細かい形の変化や微妙な色の変化を追えると
さらによくなると思います。

 

お次はこちらもです。

コチラの作品はカメラの都合上暗い部分が
青っぽくなってしまったようですが、
実物はもう少し赤っぽいそうです。

コチラの作品は明暗の大まかな印象は
とらえられていますね。

 

気になるポイントとしては

コチラの作品はキャンバスに描かれたようですが、
絵の具が非常に薄塗りなのがきになります。

絵の具層が薄すぎて
キャンバスの布目が見えていますね。

 

暗い部分はこのくらいでも気になりませんが、
明るい部分はもう少し、水の混ざっていない
こってりした絵の具で描くと良いと思います。

 

また中間の明るさのゾーン、オレンジのゾーンを
もう少し鮮やかにしても良いでしょう。

また、光の形、カゲの形をもう少し正確に
再現できると良くなるでしょう。

 

イチゴのカゲの形がもう少しイチゴの立体的な
フォルムに張り付いた形に見えるように
描けると良いです。

また、これは皆さんにもいえることですが

炎の周りはまだ粗い筆のタッチが見えています。

この部分を筆のタッチが見えない細かい
グラデーションで追い切れると
さらに良くなるでしょう。

 

また、明暗の境界線付近の情報量も
まだ少ないですね。

ここの細かい形の変化や微妙な色の変化を
追えるとさらによくなると思います。

 

 

お次はコチラの課題です。

この課題では様々な色のついた
モチーフを色付きの光で描く

という最も複雑な課題でした。

この課題でも重要だったのが、やはり

明度、彩度、色相を意識して3色塗り分ける
ということでした。

これまで通りですね。

 

イメージとしては
ピーマンの課題で学んだことと
ハクチョウの課題で学んだことの組み合わせですね。

白い部分はハクチョウの時の3色で
葉っぱの部分はピーマンの時の3色で

赤い花の部分は

明るい鈍目のオレンジ
鮮やかな赤
暗くやや鮮やかな赤紫

で描きます。これも色彩理論通りですね。

それでは講評にはいっていきます。

 

コチラの作品を提出頂きました。

大まかな明暗、彩度、色相
は再現できていますね。

この絵を目を細めて見たり遠くから
眺めるとかなり自然な第一印象を受けます。

大まかな色の配置はOKです。

惜しいポイントは全体的に粗いということです。

光の形や影の形をもう少し細かく正確に観察したり

色の変化をもう少し細かく作っていければ、
この作品はさらに良くなるでしょう。

また、今回何度か話題にしましたが

明暗の境界線付近の情報量もまだ少ないですね。

ここの細かい形の変化や微妙な色の変化を
追えるとさらによくなると思います。

しかし、ナイスガッツだと思います。
この課題はおそらくこのオンライン絵画教室で
最も複雑な課題です。

この課題を完璧にこなせれば、
色彩に関して困ることはなくなるでしょう。

 

あらゆる光の条件でどんな色のモチーフも
頭の中で想像して描けるようにもなるでしょう。

この理論の習得はなかなか一朝一夕には
いきませんが得られるものは大きいです。

 

難しい課題に果敢に挑戦し、
提出してくださった方ありがとうございます。

これからも頑張っていきましょう。

 

続いてはコチラの作品です。

この作品を描いた方は赤い花の立体感が
出ないことを気にされていました。

しかし赤い花はこんなもので良いと思います。
赤いモチーフは元々立体的に
描くのに向いていないのです。

なので、多くの画家は赤いモチーフを
平面的な形として処理していることも多いのです。

 

それよりも重要なのは中心の2つの
白い花の立体感だと思います。

画面全体の大まかな色の配置は完璧です。
遠目で見た時はホンモノソックリでしょう。

ただ惜しいポイントは視線が集まる中心の
主役部分がしっかり描けていないことです。

逆にそこさえクリアできれば100点だと思います。

これは、キワのやり取りを意識してみてください。

主役の白い花の明暗の境界線付近はもっと強い
ハードエッジなキワを作ると良いでしょう。

 

さてさてみなさんお疲れ様でした。
アクリル編の作品講評はここでお終いです。

アクリル編は非常に理屈っぽい話も多く
複雑だったかもしれません。

感覚派の方はなんでこんな
小難しいセオリーを学ばなきゃいけないのか

わからなかったかもしれません。

 

そこで今回、画家がセオリーを学ぶべき
理由を最後にお伝えしていきます。

 

 

デッサンのパートでも遠近法や明暗法などの
セオリーをお伝えしましたね。

遠近法を学び理解した瞬間、自分が眺めている
世界のどのあたりに目線の高さがあって

街を歩いている人のなかで自分と
同じ身長の人が見つかるようになった。

そんな私の体験談をお伝えしました。

 

また、明暗法の回では、反射光のお話もしましたね。

モチーフのカゲの中にあるぼんやり明るいゾーンを
再現することでモチーフと床の距離感や
モチーフの回り込みのフォルムを再現できる

そんなお話をしました。

 

遠近法を理解したおかげで
目線の高さを意識するようになった。

反射光の存在を知ったおかげで
カゲの中にも明るいゾーンを
見つけることができるようになった。

 

デッサンを学ぶ人はこのように、
セオリーや知識を得ることで、

世界の見え方が少し変わるのです。

 

普段ぼんやり眺めている世界を少しだけ
精妙に見れるようになるわけです。

さてさてここからが本題です。

 

このようにセオリーを理解して、
世界の見え方が変わる

これは色彩理論を学んだとき
にも体験できるのです。

コチラはつい先日撮った写真です。

私は普段、運動不足解消のために海辺を夕方走っているのですが

こんな白い流木が目に飛び込んできました。

多分世界中のほとんどの人が
この流木をみても何も感じないと思います。

 

しかし色彩理論を理解している
私は感動したわけです。

その場で足を止めスマホを取り出して
写真とりTwitterでつぶやいたりしたわけです。

この日没直前の夕日を浴びた白い流木は
ハクチョウの時の色彩理論を見事に表しています。

明るいゾーンは鈍目の黄色よりのオレンジ
中間の明るさのゾーンは鮮やかなオレンジ
明暗の境界線付近に流木の細かい表情が現れ
暗いゾーンは良く晴れた日の空の色味を反映した青色をしています。

理想的なライティングです。

この時私は、素直に世界は
美しいなと思わされたわけです。

難解な色彩理論を理解して
何枚も理論を生かした絵を描いた経験を通して

何の変哲もない白い流木に
美しさを見出すようになったわけです。

このようにセオリーを理解していると、
感受性がより精妙になっていくわけです。

そんな感受性を持った画家が絵を描いたら
ひょっとしたら絵を見た人に

世界の見え方が変わる瞬間を
追体験させるような絵を描けるかもしれません。

 

みなさんも是非色彩理論をマスター
できるよう取り組んでみてください。

最後までご視聴頂きありがとうございます。